個性派記者の本音トーク 加藤

【札幌39戦0勝】函館の勢いはどこに?佐々木大輔の実情をチェック

個性派記者の本音トーク 加藤
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イキナリだが、今日はデータから皆様に見てもらいます。この勝利数・着度数の数字、誰か分かるかな?

函館(18-10-14-74)
札幌(0-2-2-35)

※札幌開催突入後、現在2週間で39連敗中……。

どうも、関西ジョッキーは大体トモダチ、加藤です。

答えはズバリ、函館リーディングを獲得した美浦所属の2年目ジョッキー・佐々木大輔だ。……って、記事タイトルに書いてあるんだから言うまでもないか(笑)。

CHECKMATEの記者コラムを読んでくださっている方なら、美浦担当の佐山記者がブレイク前から何度もピックアップしたからご存知かと思う。そして、彼の予告通り、函館開催で一気に花開いた。北海道シリーズ常連のベテラン・中堅らを相手に開催リーディングを獲ったんだから大したモンだ。

ところが、上記した通り、札幌開催に入ってからは大苦戦。2週間で勝ち星はゼロ、目下39連敗中である。騎乗馬は全然減っていないし、今週以降も沢山の依頼が集まる予定になっているが、ちょっと厳しい船出となった。

……というのは勝利数を見れば誰でも分かること。大事なのは『成績が伸びていない理由』をしっかりと見極めることだ。コレが分かっていないと馬券の取捨ができないからな。


個人的に取材している中での感触と、結果からは今のところ下記の3点がポイントのように思う。順に見ていこう。

①騎乗馬の質が函館に比べて下がっている

函館であれだけ結果を残せば、一般的に考えれば『札幌開催になれば騎乗馬の質がより上がってくるのでは?』と期待されても不思議はない。ところが、実情は全く異なる。

函館で騎乗していた馬の平均人気は【4.7番人気】に対して、札幌での2週間は【6.8番人気】。つまり、騎乗馬の質が取り立てて上がっていないどころか、札幌に来てからは下がっているんだよね。

まあ、函館終盤からルメールが北海道シリーズに合流したり、札幌から参戦しているジョッキーも居たりして、騎手のレベルが相対的に上がっているため、大輔に良い馬が回りづらいってのは正直あるよね。

これが秋競馬になって、ローカルの福島とか新潟になればまた騎乗馬の質は上がってくるんだろうけど、札幌開催中は今後も簡単じゃない戦いを強いられると思うな。

②勝たせた馬たちは軒並み“一仕事終えた後”

しかも、函館で勝った18鞍の内訳を見ると、結構な偏りがあるんだよ。具体的には以下の通り。

佐々木大輔・函館18勝のレース内訳など
2歳新馬:3勝
3歳未勝利:10勝
3歳上1勝クラス:5勝


それ以外(2勝クラス以上):0勝

そして、18勝すべてが“違う馬”

要するに、自らの手で『一仕事終えてしまった馬』ばかりなんだよね。コンビを組んで続戦した馬もまずまず居るが、どの馬も上のクラスでの戦いで壁にぶつかっている。

しかも、この時期の3歳未勝利なんてのは、能力のある馬は大体勝ち抜いている中で行われるワケだから、必然的に出走馬のレベルは下がってくる。それでいて、春から使い詰めできている馬が多い。

そういう馬を未勝利戦で勝たせるのは素晴らしい一方で、その後すぐに上のクラスで通用するかと言われると厳しい面もあって当然だ。

③エージェントの営業力・政治力が強くない

今、札幌開催2週間を終えた段階で開催リーディングを争っているのが横山武史(9勝)とルメール(9勝)。次点の浜中俊(4勝)と圧倒的な差を付けている。恐らく、このままマッチレースになるだろう。

この両名、ココまでに築き上げてきた実績が段違いな点もさることながら、担当エージェントの力が強い点も見逃せない。

ココで言う“エージェントの力”というのは、もちろん現場での知名度や営業力もあるが、それに加えて『担当している騎手のレベルが高い』という点も加味している。


例えば、武史のエージェントは他に丹内祐次宮崎北斗小林美駒を担当している。うち丹内は一緒に北海道シリーズに参戦しているな。つまり、このエージェントに声をかければ「武史がダメでも丹内が乗ってくれる確率が高い。それなら声をかけやすい」となるワケだ。

(※昔なら信じられないような話だけど、今の丹内は周囲からの評価がかなり上がってきている。マイネルの馬ばっかり乗ってた頃からすると本当に変わったもんだ……)

ルメールに至ってはさらに凄い。他の担当が武豊浜中俊泉谷楓真だ。北海道で乗っていない泉谷くんは除外するとしても、ルメール含む札幌の上位騎手3名で営業できる点ではメチャクチャ強い。

しかし、佐々木大輔を担当しているエージェントは、他の担当騎手が丸田恭介山田敬士。中でも山田くんの方は大輔と一緒に北海道シリーズに参戦しているとはいえ、今年ここまで未勝利の騎手だ。そうなると、やっぱり営業的な観点で上記2名(武史・ルメール)には劣っちゃうんだよな。



というわけで、札幌突入後の2週間については、本人が乗れているかどうか以前に、環境的な問題の方が大きいと思っている。

だから、個人的には大輔の成績がココで停滞していること自体はあまり心配していない。ただ、馬券的には函館ほど狙えるシーンが減っているというだけでな。


札幌開催の後半からは“某マジックマン”が参戦予定だったり、ワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)開催で東西のトップジョッキーが揃ったりと、大輔にとってはさらに厳しい状況にはなると思うが、彼の一番の持ち味は『勉強熱心なところ』だと思っているので、むしろ数年後の飛躍に向けてはイイ環境だと思う。その点は現地で一緒に乗るトップジョッキーたちも認めているからね。

ココ最近、若手絡みのトラブル・問題行動が目立つ中で、大輔にはそういう傾向が現状見当たらないのが好感が持てる部分なんだよな。まあ、先輩との付き合いでススキノやら連れていかれることはあるんだろうけど、上手いバランスで競馬にしっかりと取り組んでもらいたいところ。


ちょっと珍しく関東の若手騎手について熱く喋ってみたが、振り返れば武史がブレイクしそうな時も、北海道でこんな感じで肩入れしながら見てたっけ……と思い出してみたり。

まあ、こうやってお近づきになれるのは良いんだけど、数年後には大輔も関西勢のライバルとして立ちはだかるのかと思うと胸中は複雑だったりする(笑)。このところ悪い方向で目立ってる栗東の若手勢も負けじと競馬で頑張ってもらいたいモンだ……。

加藤

関西ジョッキーは「だいたい友達」
幼少期に競馬場で武豊を生で見てジョッキーを志し「圧倒的に勝ちまくるユタカとアンパンマンが幼少期のヒーローだった」(本人談)。残念ながら競馬学校入学の規定に合わず夢を断念するも、同じ世界で働きたい一心で業界に飛び込んだ。「最後に馬券を託すのは騎手。騎手なくして馬券は買えない」が座右の銘で、関西ジョッキーはだいたい友達を公言し、騎手エージェント事情にも深く精通している。

騎手を志しただけあって騎乗技術にはとてもうるさく、ほとんどの騎手のクセを手の内に収めている。横山武史、坂井瑠星など、サイト内でブレイクを予告した若手騎手が軒並み大活躍中。

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