
どもども、関西ジョッキーは大体トモダチ、加藤です。
今日は騎手じゃなくて“厩舎”の話題をしたい。まあ途中にはちゃんと騎手絡みの話が入るのでそこは気にしないでほしい。早速行くぜ!
先週のコラムで書いた“川田将雅の授業参観”案件、まあ実際その通りだったのはともかくとして、ジョッキーベイビーズでご子息(純煌クン)が勝っちゃうんだから大したモンだ。血は争えないってことだねえ。
あと、小学6年生とは思えない落ち着いた立ち振る舞いにビックリしたよ。1着で入線した後に馬を流す感じなんか、父親そっくりだもんな。過去には嬉しさでガッツポーズや笑顔を見せた子も何人も居たし、むしろそれが子供なら自然なことのようにすら思えるところ。
目標は『父を超えること』と宣言していた純煌クンの将来が今から楽しみだ。彼が現役騎手になるまでオレは騎手情報担当を辞められないね!
さて、今日の記事で採り上げたいのは栗東・杉山晴紀厩舎だ。
先週末にはデアリングタクトの現役引退が発表されたばかり。やはり、脚元の不安が最後まで響いてしまったようだな。非常に残念だけど、無事に繁殖に上がれることが何よりだろう。本当にお疲れ様でした。
そのデアリングタクトによって一気に名声を獲得した後、近年はすっかりリーディング上位に定着。先週はエルトンバローズで毎日王冠を制覇。今年は先週時点で45勝(※中央のみ)を挙げ、2位の中内田厩舎とは5勝差と快走中だ。
そのエルトンバローズに関しては、重賞担当の山川記者が【毎日王冠】の特集ページでこんなことを紹介していた。
(杉山晴/西村淳)
数々の名馬がデビューしてきた菊花賞週に新馬戦へと出走しているだけあって、厩舎サイドの期待はデビュー前の段階からかなり高かったんだよな。勝ち上がるまでには少々時間がかかったものの、直近は3連勝。ようやく軌道に乗ってきたというのもあるし、西村淳也と手が合っているというのも良かったよな。
西村はこの馬のために福島遠征も行っていたように、鞍上サイドとしてもかなり期待の高い馬には間違いない。杉山晴厩舎は春に安田記念も使ったガイアフォースを天皇賞戦線へ送り込み、マイル路線はこのエルトンバローズで臨もうという算段だそう。鞍上、厩舎サイドともに今後も含めて大きな期待をかけている馬だけに、古馬初対戦でも結果が欲しいところだろう。
この情報通り、そして厩舎の思惑通りに勝利。まあ、ソングラインやシュネルマイスターは仕掛け遅れが響いた部分があり、レースレベルについては現状何ともだが、采配的中という点は本当に見事。
そもそも、春にはマイル路線を目指し、マイラーズCで2着、安田記念で4着と適性を示したガイアフォースを再び中距離路線に回すだけの余裕があるってのも凄い話だよな。っていうか中距離はジャスティンパレスだって居るのにね。
ただ、この厩舎に関してはあまり一般的に内情が知られていないというか、どうにも“掴みどころがない”と思っている方も多いのではないだろうか。
そこで今回は、杉山晴厩舎を狙う上でポイントとなる『他厩舎との違い』や『個性』を紐解いてみよう。これまでの取材の積み重ねとデータ面を踏まえて、今日は2点ご紹介したい。
①特定騎手に頼らず、日本人騎手をまんべんなく重用
②2歳勢が好調!無理せず勝利数を稼げている
①特定騎手に頼らず、日本人騎手をまんべんなく重用
まずは現時点のリーディング上位5厩舎の“とあるデータ”を見てほしい。実はすべて関西厩舎だったりする。この比較で何が分かるかな?
中内田 40勝 勝利騎手:11名
矢作 36勝 勝利騎手:12名
上村 34勝 勝利騎手:13名
清水久 31勝 勝利騎手:17名
これは、それぞれの厩舎の勝利数と『勝った時に起用していた騎手』の人数を比較したものだ。
例えば、中内田厩舎なら川田将雅という盟友の存在が居て、中内田×川田コンビで(20-7-5-26)と厩舎の勝利数の半数を稼いでいる。
矢作厩舎の場合は自厩舎の坂井瑠星が乗って(14-13-12-78)、古川奈穂が(6-7-4-66)だ。というか、この2名だけで厩舎全体の出走レース数397に対し、ほぼ半分の200レースを占めているのは凄いな……。
そういう厩舎に比べて、杉山晴厩舎は様々な騎手を幅広く起用して、それでしっかり結果を出しているという点が面白いポイント。傍から見ると「誰が乗った時が勝負なのか分からない!」って言われそうなので(笑)、その点ではスポーツ紙や専門紙を見るだけでは読み解くのが難しい、玄人向けの厩舎と言えるかもしれないな。
一応、杉山晴厩舎で今年最も勝っているのが西村淳也だ。先週のエルトンバローズも含めて(10-7-1-23)なので、このコンビの時はより注目して損は無いだろう。次点以降は松山弘平(6-4-6-8)、鮫島克駿(4-3-2-13)が続く。
また、マニアックなところで言えば騎手リーディング75位(9勝)の長岡禎仁で(3-2-0-12)、同じく90位(5勝)の高倉稜で(3-1-0-20)と、いわゆる“マイナージョッキー”にも目をかけている点にも注目。調教からレースに至るまでしっかりとコンタクトを取ってくれて、意思疎通がしやすい騎手を選んでいるみたいだ。
②2歳勢が好調!無理せず勝利数を稼げている
6月から始まった今年の2歳戦もそろそろ5ヶ月というところで、上位勢の成績を見てみるとこんな感じだ。
調教師 | 着別度数 | 勝率 | 複勝率 | デビュー頭数 |
---|---|---|---|---|
須貝尚介 | (9-5-4-16/34) | 26.5% | 52.9% | 19頭 |
西園正都 | (9-3-7-13/32) | 28.1% | 59.4% | 17頭 |
杉山晴紀 | (8-4-3-5/20) | 40.0% | 75.0% | 14頭 |
高野友和 | (8-3-0-9/20) | 40.0% | 55.0% | 13頭 |
堀宣行 | (8-1-1-3/13) | 61.5% | 76.9% | 9頭 |
……堀厩舎の方が凄いじゃねえか、ってのはともかく(先週・サウジアラビアRCのゴンバデカーブースも勝った)、杉山晴厩舎は出走頭数と勝ち星のバランスが非常に良い。表の右端に記載した『デビュー頭数』がポイントだ。
勝利数は須貝尚厩舎、西園正厩舎の方が1つ上ではあるんだけど、この両厩舎は早くから2歳馬をバンバン使って勝ち星を稼いでいる側面があるので、来年に繋がるかどうかは正直疑問なところがある。早熟馬を早めに勝たせて賞金を稼ぐのも立派な戦略なので、否定はしないけどね。
ただ、杉山晴厩舎はデビュー頭数の多さで稼いだ数字じゃない。2歳馬に無理をさせての結果ではないんだ。
この先にも楽しみな2歳勢がまだまだ控えているとオレも聞いている。つまり、デアリングタクトが引退となっても、しっかりと勝利数を積み重ねていくビジョンが明確に見えているということだな。
他にも色々と活躍の要因はあるが、一気に紹介していくとキリがないので、今日のところはココまでとしよう。
上記で解説した中にも馬券のヒントが随所に詰まっているので、ぜひとも参考にしていただければと思うね。オレは基本的に騎手絡みの取材が中心だけど、個人的にもっと深く切り込んでいきたい厩舎なので、今まで以上に熱心にマークしていくつもりだ。

加藤
関西ジョッキーは「だいたい友達」
幼少期に競馬場で武豊を生で見てジョッキーを志し「圧倒的に勝ちまくるユタカとアンパンマンが幼少期のヒーローだった」(本人談)。残念ながら競馬学校入学の規定に合わず夢を断念するも、同じ世界で働きたい一心で業界に飛び込んだ。「最後に馬券を託すのは騎手。騎手なくして馬券は買えない」が座右の銘で、関西ジョッキーはだいたい友達を公言し、騎手エージェント事情にも深く精通している。
騎手を志しただけあって騎乗技術にはとてもうるさく、ほとんどの騎手のクセを手の内に収めている。横山武史、坂井瑠星など、サイト内でブレイクを予告した若手騎手が軒並み大活躍中。