個性派記者の本音トーク 加藤

【マニアックな話】来年からムチの使用ルールがさらに厳しく……困る騎手は誰だ?

個性派記者の本音トーク 加藤
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どうも加藤です。今日はちょっとした騎手絡みのルールのお話がメインです。正式に発表されたワケじゃないので、これもある意味で先行情報だね。

先週のオーサムリザルトの的中(11/18東京10R)や、その他反響が大きかったレースの話は別のところで展開しているので、今日は先々の話を少々。

我々は今週末の馬券ネタはもちろん、先々の情報収集にも余念がない。何事も先回りしておくことが大事なのは言うまでもないだろう。

そんな中で聞いた話があって、ゆくゆく公式発表があると思うんだけど、2024年からムチの使用回数ルールがさらに厳しくなるらしいのよ。


近年、特に海外競馬では“動物愛護”の観点からムチの使用を抑制するルールが施行されていて、日本も基本的にはそれに倣っている。主に下記の内容だ。

ムチ使用に関する現行の主なNG案件
・馬がケガをするほどの過度なムチ使用

・肩より上方に腕を上げてムチを振り下ろすこと

・反応(脚勢)のない馬に対する過度なムチ使用

・明らかに態勢が決した後、またはゴール後の過度なムチ使用

・ひばら(脇腹)、頭部(あるいはその付近)へのムチ使用

・2完歩あけることなく、5回を超えたムチの連打使用
(※回数制限は国によって異なる)

だいたいこんな感じ。まあ、一番引っかかりやすいのは最後に書いた『ムチ連打の制限』だよね。

実際、ムチがどれだけ馬の反応に繋がっているのかはさておき、必死に馬を追うジョッキー側からすると、無意識のうちにムチを連打しているケースは少なくないし、場合によっては制裁を覚悟してムチを入れ続けるジョッキーだっている

ほら、最近でもムーアがアメリカでルール違反をして、その騎乗停止云々が日本でいつ適用になるのか……みたいな話題があったじゃん?

あれもレースがブリーダーズカップ・ターフというGIで、騎乗していたのがオーギュストロダンという実績ある馬だったからこそ、本人としても力が入っていたんだろうよ。「どうせ自分の罰金と少々の騎乗停止で済むなら、目の前のレースを何が何でも勝ちに行く」という姿勢が見られるのは当然のことだからな。


とはいえ、ジョッキー側とすれば厄介なルールになったことは間違いない。動物愛護の観点うんぬん……の話はココでは避ける(※この話題は正直、色々な派閥があると思うのでいくら話しても平行線だろう)けれど、決まりには基本的には従うしかないからね。

現状、日本(JRA)ではムチの使用ルールを破った際に、徐々に制裁が重くなっていくんだが、それでも騎乗停止に至ることはなかった。そこに、来年からはムチ関連の制裁に騎乗停止も加わるそうだ。オレが某厩舎関係者から聞いた話だと下記の通り。

現行ルール 2024年から
初回 戒告 戒告
2回目 過怠金1万円 過怠金1万円
3回目 過怠金3万円 過怠金3万円
4回目 過怠金5万円 過怠金5万円
5回目 過怠金7万円 過怠金7万円
6回目 過怠金10万円(以下同じ) 過怠金10万円
7回目 過怠金10万円 騎乗停止1日
8回目~ 過怠金10万円 騎乗停止2日(その都度)

ざっと、こんな感じでございます。今までは制裁の上限が過怠金10万円だったのよね。

ちなみに、騎手に制裁が加えられる事象についてはJRA公式ホームページのレース結果のところを見れば分かるんだけど、さすがにそんな箇所を逐一見ている競馬ファンの方はほとんど居ないだろう。

ただ、オレは結構この部分を気にしていて、例えば外国人騎手は一定の制裁点をもらっちゃうと翌年の短期免許が支給されなくなるし(※今年はダミアン・レーンが該当したアレ)、内部情報的には意外と重要なポイントだったりする。


このルールによって、今年特にムチの連打で制裁をもらっている松岡正海北村宏司M.デムーロあたりは気を付けないとマズいことになるな。

例えば、松岡の場合は今年すでに13回(※加藤調べ)のムチ制裁をもらっているので、新ルールで考えるとすでに騎乗停止13日分ということになる。まあ、流石に少しは改善してくるだろうが……。気を遣い過ぎて馬の能力を引き出しきれない、なんてことにはならないといいがな

来年はこの辺りにも注目しつつ、騎手の乗り方を見てもらうのも面白いかもしれないぞ。

オマケ:制裁点が少なくて結果を出してる騎手は誰?

最後に、制裁絡みで個人的に「コイツは特に凄い」と思っているのは松山弘平丹内祐次の2名だ。

松山は今年行われたJRAの開催で、現時点で一番騎乗数が多いジョッキー(先週終了時点で803鞍)なんだが、今年の制裁点数はわずか9点。狭いスペースを積極的に付く割には、他の馬に迷惑をかける場面が非常に少ない。これは技量が伴ってないとできないよね。

丹内は今年の騎乗数が4番目に多く(785鞍)、かつレースが紛れやすい(※小回りが多い、技量が足りてない若手の参戦が目立つ)ローカル開催での騎乗がメインにもかかわらず、制裁点数が8点というのは素晴らしいよ。癖のある馬に乗ってる回数も相当多いはずだし、全力騎乗が目立つ中でクリーンな競馬を実現できているのは腕前があってこそ。

あと、この分野の常連としては武豊(10点)とかルメール(9点)とか。普段から見てわかる通り、スマートな立ち回りが多くて納得できると思う。


※なお、さっき名前を挙げたムチ連打の常連は松岡正海(87点)・北村宏司(83点)・M.デムーロ(64点)です。違いが大きすぎる。

加藤

関西ジョッキーは「だいたい友達」
幼少期に競馬場で武豊を生で見てジョッキーを志し「圧倒的に勝ちまくるユタカとアンパンマンが幼少期のヒーローだった」(本人談)。残念ながら競馬学校入学の規定に合わず夢を断念するも、同じ世界で働きたい一心で業界に飛び込んだ。「最後に馬券を託すのは騎手。騎手なくして馬券は買えない」が座右の銘で、関西ジョッキーはだいたい友達を公言し、騎手エージェント事情にも深く精通している。

騎手を志しただけあって騎乗技術にはとてもうるさく、ほとんどの騎手のクセを手の内に収めている。横山武史、坂井瑠星など、サイト内でブレイクを予告した若手騎手が軒並み大活躍中。

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