どうも、若手ジョッキーは特に大体トモダチ、加藤です。
先週の当コラム……モレイラの短期免許を巡る裏事情については本当に沢山の反響を頂戴した。「この記事を読んだおかげで、モレイラ騎手の乗り方をより一層細かく見るようになって面白くなった」なんてありがたいお声も届いていたようだ。
結果、ヴィクトリアマイルのマスクトディーヴァは3着に敗れた。見ての通り、直線で外からドゥアイズに進路をブロックされ、狭いスペースを割ろうとしたものの無理筋な状況となり、最後はなんとか内に進路を切り替えたものの、盛大に脚を余してしまったな。
※この件で、ドゥアイズのブロックに対して強引に進路を確保しようとしたモレイラの方に“戒告”が出されている。制裁点が1点加算され、これで今年モレイラが受けた制裁点数は【13点】となった。
公式発表では『マスクトディーヴァ号の騎手モレイラは、後の直線コースで十分な間隔がないのに先行馬を追い抜こうとしたことについて戒告(被害馬:ドゥアイズ)』となっている。
“スムーズなら勝っていた”というのは、恐らく競馬ファンの大半が分かるような内容だったと思う。それでも、負けは負けだ。
モレイラが追い込まれている現状については先週のコラムで書いた通り。そんな中で、残り期間で最も有力だと思われていたマスクトディーヴァで星を落としたのはあまりにも痛すぎる。
これまたすでに喋った通り、今週(オークス週)はブラジルへ一時帰国し、残るは日本ダービー(ダノンエアズロックが濃厚)と安田記念(ソウルラッシュ)のみ。窮地に追い込まれたモレイラの手綱捌きに引き続き注目してもらいたい。
さて、ココからが本題だ。
ヴィクトリアマイルに関しては“モレイラが見栄えの悪い負け方をした”ことで、これを騎乗ミスと捉える声が大きいようだけど、実際はブロックしたドゥアイズの鞍上・鮫島克駿の方を褒めるべきだと思うんだよな。
内を走る馬が進路を確保しようと幅寄せをしてきて、前の馬との間を割って入ろうとするのは技術が必要である一方で“強引な騎乗”だから、責任は割ってきた側にある。そして、これを上手くブロックするのも技術なんだよ。
もう1週前、NHKマイルCでも似たような状況があった。外へ抜け出したいアスコリピチェーノ(ルメール)を、徹底的に内に押し込めたジャンタルマンタル(川田将雅)のケースだな。あれもライバルの能力発揮を阻害した上で、かつ“フェアな範囲”でのプレーだった。
それを彷彿とさせるような鮫島駿の騎乗、残念ながらドゥアイズは僅差4着ということで、実は山川記者の★評価だった(相手本線の中でも一番の大穴馬)ことを考えるとかなり悔しい結果ではあるんだが、
今年好調が続いている要因としては、こういう勝負処でしっかり乗れるようになってきたことも大きいのかなと思うね。
2024年ここまでの成績(5/12時点)
合計:41-34-29-210
勝 率:13.1%
連対率:23.9%
複勝率:33.1%
※勝率はキャリアハイの2022年(9.0%)を大きく更新する勢い!
ご覧の通りの好成績、このまま色々な面でキャリアハイを更新してもらいたい気持ちは大きい。
ただ、実は少し前まで“懐疑的”に思っていた部分もあった。というのも、この勝利数のうち、17勝を冬の小倉開催で稼いだんだよな。
父親が佐賀競馬のレジェンド(鮫島克也)である鮫島駿にとって、小倉開催は“地元”と言ってもイイ大事な舞台ではあるんだけど、個人的にはやっぱり『良い騎手が揃う本場で乗って結果を出してほしい』と考えているんだよ。それで正直、春競馬本番はどうなるかな~と思っていたんだが、しっかりと結果を出し続けている。
最近では美浦・堀厩舎あたりからも重用されるようになってきたし、今後もさらに活躍の幅を広げてほしいところだな。
あとはGIタイトルにいつ手が届くか。ちょっと前で言えばジャスティンパレスだったり、それこそ最近のジャンタルマンタルもそうだけど、実は後のGI馬で結果を出しているケースはあるんだよ。なんだけど、大舞台では乗り替わりになることが多い現状だ。こればっかりは、信頼を積み重ねていくしかないんだよな。なんとか頑張ってほしいところ。
最後に……ここからはちょっと“穿った見方”ではあるんだが。
先述の鮫島駿のブロックによって、モレイラの来年以降の来日チャンスにさらに陰りが見えてきたワケだから、この先々の結果によっては『鮫島駿はあの騎乗で、自身の来年以降のチャンスを大きく増やした』という風になる可能性まである。
あるいは、短期免許で来日するジョッキーに出番を食われている騎手たちからは「カツマ、よくやってくれた!」なんていう風に見られるかもよ。
モレイラの短期免許を巡る問題はまだ着地していない中で、鮫島駿にとっては大きな“ターニングポイント”となるドゥアイズのガッツ騎乗だったかもしれない。さらなる活躍に期待しよう。
加藤
関西ジョッキーは「だいたい友達」
幼少期に競馬場で武豊を生で見てジョッキーを志し「圧倒的に勝ちまくるユタカとアンパンマンが幼少期のヒーローだった」(本人談)。残念ながら競馬学校入学の規定に合わず夢を断念するも、同じ世界で働きたい一心で業界に飛び込んだ。「最後に馬券を託すのは騎手。騎手なくして馬券は買えない」が座右の銘で、関西ジョッキーはだいたい友達を公言し、騎手エージェント事情にも深く精通している。
騎手を志しただけあって騎乗技術にはとてもうるさく、ほとんどの騎手のクセを手の内に収めている。横山武史、坂井瑠星など、サイト内でブレイクを予告した若手騎手が軒並み大活躍中。