
こんにちは、今日は真面目な話ばかりします。騎手情報担当の加藤です。騎手絡みの色々は明日以降にご紹介予定です。
7月前半のビッグイベント、セレクトセールが今年も無事に終わりました。
昔から付き合いのある馬主関係者に「今年も行くけど、加藤クンはどうする? 一緒に来る?」って誘われたんだけど、今回は断っちゃった。昔は何度も行ってたんだけどね。
今年は情報収集を仲間に任せて栗東に残ることにしたよ。ほら、何度も北海道と往復するのも大変だし、栗東で色々やりたいこともあったからね。
それでも、ほぼリアルタイムで中継は全部見させてもらった。その上で、まずは個人的に今年思ったことを書き記しておきたい。

正直「この先、どこまで売り上げが伸びるんだろうな」というのが想像が付かないほど、今年も売れに売れた。それが第一印象だ。まずは2日間の売上などをチェック。
1日目(1歳部門)の結果
落札頭数:224頭
売却率:96.1%
売却総額(税別):144億9700万円
平均価格(税別):6471.8万円
最高価格(税別):5億9000万円
2日目(当歳部門)の結果
落札頭数:231頭
売却率:96.7%
売却総額(税別):144億2100万円
平均価格(税別):6242.8万円
最高価格(税別):4億1000万円
ということで、今年2日間の売却総額は289億1800万円。2023年が281億4500万円だから、またレコードを更新しちゃったね……。
「消費税で高級車が買える」「いや、一軒家が買える」というような、現実とは思えないような金額が飛び交うのも毎年恒例のこと。
今年は会場にアストンマーチンとGUCCIの企業出展があったと聞いているが、セレクトセールを見た後だとソッチの金額がメチャクチャ安いように見えて、結果的に高級外車やブランド品が売れるのかもしれない(笑)。
そう、ダノックスさんとか、藤田晋オーナーとかが高値でバンバン競り落とすのはもう“当たり前”だ。そして今年は特に、5000万~1億円くらいの中間層の競い合いが多かったように感じる。それだけ、馬主を志望する人がますます増えているんだろう。
という中で、今更になっちゃうけど改めて書いておこう。
『セレクトセールって何が凄いの?』
『なんで高いお金を出すの?』
という話だ。

教えて!加藤先生
そもそも、セレクトセール等で用いられている“オークション”というシステムは、出品者が公開した商品(今回で言えば幼駒)に対して、最高価格を申し出た人間が落札する競売方式だ。
最近だと【ヤフオク!】に代表されるインターネットオークションで買い物をする人も多いだろう。
つまり、出品されたそれぞれの幼駒に対して、その時点での馬体や骨格、血統、兄・姉の成績といった馬そのものの要素から、生産牧場や育成環境といった出品者に対する評価が主となって、客(今回で言えば馬主)が入札していくワケだ。

ハンマープライス!
しかし、オレはそこに加えて『セレクトセールにしかない価値』があると思っている。
セレクトセールが何故あれだけ盛り上がるかって、当然良い馬が出そろうこともあるんだけど、馬主さんが支払う金額には、馬そのものの価値以上に“人間関係を作る場”としての機能性が大きいからだとオレは思っている。
そりゃ、そうだよな。天下のノーザンファームが主催であり、ブランド力の高さは言うまでもない。加えて、そこに集う調教師・騎手・生産者の数は到底数えきれないほど。
この先のセールでもこれらの人々は集まるとはいえ、流石に規模感は小さくなる。だから「最初はセレクトセールで買ってみよう」「セレクトセールでまずは知り合いを作ろう」と考えるのは自然なことだ。
そして、ノーザンファーム生産馬の場合、何も業界事情が分からないまま馬を買っても“アフターケア”がしっかりしている。
代表の吉田勝己氏を中心に落札を祝ってくれるし、厩舎への斡旋も任せられる。そしてデビューまでの育成、デビュー後の外厩まで保証付きだからな。
だからこそセレクトセールは大盛況になるし、そこに集う関係者たちの話が大事になるということ。そりゃあ、特に最近の馬主さんはセレクトセール一択になるだろうよ。

そう、そこで得られる人との“縁”を“円”で買っているのだ。上手いッ!
セレクトセールとて、昔からこれだけマンモス級のセールだったワケではない。それこそ初年度の1998年は1億円越えが7頭、最高額でも1億9000万円、合計売上が48億5100万円(税別)と、まあ時代背景を考えればこれでも凄いんだけど、その当時は今年のような結果になるだなんて思いもしなかった。
というか、2020年の時点でも合計売上は187億6100万円(税別)だから、本当にココ数年の売り上げの伸びが半端ない。これはひとえに“ノーザンファーム側の企業努力”だと思うんだよな。


ココ最近、改めてノーザンファーム関連施設を色々研究しているけど、やはり設備の充実や育成ノウハウへのこだわりは、馬産地界でも最上級のモノがあると思う。後はそこで働く“人”がしっかり育っているのも重要ポイントだな。
ノーザンファーム主体の競馬、特に外厩で仕上げてトレセンではほぼ馬なり……というのが面白くないという見方自体は否定しない(オレもたまに思うところはある)けれど、業界で突き抜けるまでやってきたことについてはリスペクトしなければならない。
そして、先週の赤崎記者の推奨馬券がそうだったように、ノーザンファームが絡んだ勝負話ってのは、この時期特に頼りになるところがある。
(シルバーランク以上の会員様限定)
[7月7日(日)函館11R]
◎キミノナハマリア
▲マイネルエンペラー
△ニューノーマル(10番人気)
馬連2点目:1450円的中
3連複:1万7470円的中
3連単:5万6320円的中
……せっかく◎キミノナハマリアは勝ったけど、オーナーさんはセリで良い馬に巡り合えてないっぽいな。まあ、それだけ価格が上がりすぎということだね。
3着ニューノーマルの馬主さんは、落札する時の名義が毎年異なるのが厄介だったりする(笑)。色々な事情があるんだろうけどね。
というワケで、先週は赤崎さんの取材ネタが炸裂しましたけども、今週は馬産地取材で入手した勝負ネタの中でも、とりわけ“スゴイヤツ”が出る予定になっているので、楽しみにお待ちいただきたいところ。ヨロシク!

以上、セレクトセールの話はおしまい。今週の騎手ネタはまたどこかでまとめて書きましょう。川田将雅が騎乗キャンセルで休むとか、大事な話も多いからね!

加藤
関西ジョッキーは「だいたい友達」
幼少期に競馬場で武豊を生で見てジョッキーを志し「圧倒的に勝ちまくるユタカとアンパンマンが幼少期のヒーローだった」(本人談)。残念ながら競馬学校入学の規定に合わず夢を断念するも、同じ世界で働きたい一心で業界に飛び込んだ。「最後に馬券を託すのは騎手。騎手なくして馬券は買えない」が座右の銘で、関西ジョッキーはだいたい友達を公言し、騎手エージェント事情にも深く精通している。
騎手を志しただけあって騎乗技術にはとてもうるさく、ほとんどの騎手のクセを手の内に収めている。横山武史、坂井瑠星など、サイト内でブレイクを予告した若手騎手が軒並み大活躍中。