
こんにちは、騎手情報担当の加藤です。
今日は随分と“騎手情報担当”らしい記事をお送りしようと思う。ズバリ、西村淳也騎手についてだ。
先週の中京記念ではエルトンバローズに騎乗して3着。先行勢が飛ばす超ハイペースの流れの中、勝負処から早めに動いて直線では先頭のシーンを作った。ただ、ゴール寸前でアルナシーム、エピファニーといった仕掛けを遅らせた組に交わされた格好だ。

騎乗していた西村淳はレース後、開口一番このような言葉を残した。
結果的に抜け出すのが速かったですね。失敗しました。
ウム、その通りだな。
シビアな話ではあるが、実際に抜け出すのが速かったのは事実だ。勝負処での仕掛けをあと一呼吸、あるいはふた呼吸待てていれば、押し切れていたようなレース展開ではあった。
ただ、これを張本人や陣営はともかく、周囲を取り巻くオレたちが“ミス”と糾弾するのは、実はあまり正しくないと思うんだよな。これは先週末の【スマッシュヒット】紹介ページで山川記者が述べていた見解と、オレもほぼ同意見だ。
ということで、今日はこの騎乗についてとやかく言うことはしない。一方で、西村淳については掘り下げたいことが色々とある。
実はこの、西村淳の「失敗・ミス」を自省する言葉、現場に居ると割と頻繁に聞こえてくるものである。ざっと覚えているだけでも結構あるんだよな。某所からレース後のコメントを引用させてもらおう。
ダノントルネード(2着)
いいスタートを切れましたが、向正面で選択ミスをしました。着差が着差だけに、それがなければ勝てたかもしれません。
ドゥラレジリエント(2着)
僕のせいです。追い負けました。すみません。
インファイター(2着)
最初は引っ掛かって向正面の半ばまでファイトしていました。途中からはいい感じで走れましたし、勝ったと思ったのですが、最後の直線は僕が御せなかったのが影響してしまいました。
ジーニアスバローズ(2着)
僕のミスです。スミマセン……。
「お前、しょっちゅう失敗してんな」
という風に思う方も居るかもしれない。ドクターX(※医療ドラマ)の主人公・大門未知子は「私、失敗しないので」という決め台詞で一世を風靡したが、それとは真逆を行くようだ……。
だが、よくよく考えてみてほしい。
例えば、堀江記者や佐山記者が好きな『野球』の場合は、守備でエラーした時のミスは目立つよな。

※あくまでイメージです
これは何故かというと、基本的に守備は“守れて当たり前”という先入観がある上に、エラーで敗戦した時のミスというのは観客の印象に強く残るからだろう。
ところが、打撃についてはどうか。基本的には打率3割で優秀な部類とされる。凄い打者でも7割近くは凡退なんだよな。
ジョッキーも似たようなものだと思っていて、ルメールや川田といった超一流たちで勝率はおおむね30%(=3割程度)。この2人が飛び抜けているが、その他のジョッキーは勝率10%少々でも優秀という扱いになる。
また、そもそも勝率を上げるためには、それだけ勝負になる打席に立たないといけない。ジョッキーの大半は“成功・失敗以前の立場でレースに参加している”という場面も多いんだ。
先ほど引用した西村淳のコメントは、すべて僅差の2着に終わったレースだ。そんな中で『こうしておけば勝てたかもしれない』という経験の積み重ねこそが、西村淳をより強くしていくのだろう。

ただ、お節介かもしれないけど、西村淳にはもう少し“余裕”を持ってみても良いんじゃないかとは思うんだよな。
普段からノーザンファームしがらきに調教の手伝いに行く姿勢はよく知ってるし、より自分の騎乗技術や地位を高めるために頑張っているのは分かる。
けれども、漏れ聞こえてくる話の一部には「開催中は常にピリピリしていて、スポーツ紙や専門紙のコメント取りへの応対が固い」という話もある。よく言えば競馬に対して真面目ってことなんだがな。
先述した「失敗しました」という数々のコメントも、そういう性格から来ているんだろうなと思う。
来週の7/30(火)に誕生日を迎えて25歳、競馬界の中ではまだまだ若いとはいえ、ゆくゆくは後輩に色々と教えていく立場にもなる。周囲からの信頼をより集める上でも、コミュニケーション能力ってのはより大事になってくるだろう。そういった時に備えて、より視野を広げていってほしいところだ。
なお、今週の西村淳は【土曜・新潟⇒日曜・札幌】の強行軍スケジュールとなっている。そのため、土曜日は新潟の終盤戦に騎乗せず、途中で切り上げて札幌へ移動するようだ。そうしないと、航空機のスケジュール上、移動が間に合わなくなるんだよね。
クイーンSのイフェイオンに乗りに行くための札幌参戦である一方、それ以外の騎乗予定馬にも気になっている馬が色々といる。週末に彼の騎乗馬が推奨馬券として提供された際には一層ご注目いただきたい。

加藤
関西ジョッキーは「だいたい友達」
幼少期に競馬場で武豊を生で見てジョッキーを志し「圧倒的に勝ちまくるユタカとアンパンマンが幼少期のヒーローだった」(本人談)。残念ながら競馬学校入学の規定に合わず夢を断念するも、同じ世界で働きたい一心で業界に飛び込んだ。「最後に馬券を託すのは騎手。騎手なくして馬券は買えない」が座右の銘で、関西ジョッキーはだいたい友達を公言し、騎手エージェント事情にも深く精通している。
騎手を志しただけあって騎乗技術にはとてもうるさく、ほとんどの騎手のクセを手の内に収めている。横山武史、坂井瑠星など、サイト内でブレイクを予告した若手騎手が軒並み大活躍中。