個性派記者の本音トーク 加藤

【突然のルール発表】短期免許の取得条件が来年から変更。恩恵を受けるのはモレイラか?それとも……

個性派記者の本音トーク 加藤
#

ちょっと騎手関連の話題が多すぎて困ってるぜ。騎手情報担当の加藤です。

今朝は小牧太さんの“JRA騎手としての最後の日”だった。

笹田厩舎の調教を付けた後、沢山の関係者と別れの挨拶を交わしつつ、栗東に残っていた荷物を片付けて引き揚げていったよ。明日からは園田で調教に乗るみたいだな。

ま~、騎手を完全に辞めるワケじゃないから今生の別れってことではないんだけど、それでも寂しい気持ちはある。今度、園田に会いに行くとするかな。

その他にも、オリンピックの馬術競技の話とか、名古屋の岡部誠さんの問題(ハラスメント事案多数で騎乗停止)とか、先週の新潟開催であった関西ジョッキーの色々とか、近々解散する方向で動いているらしい某厩舎の件とか喋りたい話は多いんだが、それ以上のニュースが飛び込んできたので紹介したい。


ズバリ、来年(2025年)から短期免許で来日する外国人騎手に関するルールが変更されるとのこと。


これまで短期免許を取得するために必要だった条件が少し緩和されるんだ。来年からのルールは下記のようになる。

短期免許取得に必要な条件
(いずれか1つを満たせばOK)

①免許取得国のリーディングで上位に入る(過去2年が対象)

②当該年+過去2年に『定められた海外競走(GI)』を2勝以上

③当該年+過去2年に『JRAのGI』を2勝以上

※以下④⑤は2025年から
④当該年または過去2年で、ワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)騎手表彰順位5位以内

⑤上記した項目②の『定められた海外競走(GI)』に、過去2年のIFHA(国際競馬統括機関連盟)が発表する『“世界のトップ100”GI競走』のうち50位以内の競走(※ランキング入りした年度の競走に限る)が加わる

このルール変更を聞いて、真っ先に思ったのが『ジョアン・モレイラへの追い風か?』というところ。

何故なら、今年の春、再三採り上げてきたのが“モレイラの短期免許問題”だったからだ。

改めて振り返ると、今年はモレイラにとって『短期免許期間中に、中央GIを2勝しなければ来年以降は取得が厳しくなる』という立場だった。

しかも、昨年(2023年)の来日時に制裁点がかさんでしまったことで、通常なら3ヶ月取得できるはずの短期免許が、今年は2ヶ月までというペナルティが付いていた。

そんな中で、戦前の見立てではGIを複数勝てそうな騎乗馬が揃っていたものの、ある時はレース中の不利で負け、ある時は自国ブラジルへの帰国で参戦できず等々、最終的に桜花賞(ステレンボッシュ)の1勝のみに留まってしまった。

モレイラ

ところが、そんな状況になった途端にルールが改正されるとのこと。個人的には何かしらの“意図”はあるとしか思えないな(笑)。

『モレイラ再来日ルート』を
現実的に探ってみよう

ということで、改定されるルールを元に、モレイラが来年以降再び短期免許を取得するために必要な条件を考えてみた。

④の場合:そもそもWASJに選ばれるのか?

こちらについては、まだ今年のWASJの外国招待騎手が発表されていないので、正直分からない部分が多い。今のところ、リサ・オールプレスとか、チャクイウ・ホーとかは内定してるって噂なんだけど。

仮にモレイラも選ばれた場合は、そこで総合5位以内を目指せば良いだけ。騎乗馬については抽選だから、抽選運に恵まれるかどうかも影響するけどな。

なお、このルールが始まる2025年の年明け時点で、該当の条件を満たす騎手は下記の通りだ。

2023年のWASJで
5位以内の外国人騎手

2位:レイチェル・キング(オーストラリア)
4位:マリー・ヴェロン(フランス)
5位:アレクシス・バデル(香港)

この3名に、今年のWASJで5位以内に入った外国人騎手も対象となる。レイチェル・キングはそもそも、この恩恵がなくても来年も来日できそうではある。他2名は本人の気持ち次第か。

⑤の場合:世界のトップ50に入るGIレースを勝てるのか?

そもそも、基準となっている『“世界のトップ100”GI競走』って何だよって思う方が多いと思うので解説すると、これはIFHAがレーティングによって定めている。レーティングって単語自体は聞いたことがある方も少なくないだろう。

ちなみに2023年は日本のGIが上位に多数ランクインしていて、ジャパンC(1位)、宝塚記念(5位)、天皇賞・秋(6位タイ)、有馬記念(8位)となっている。ほぼイクイノックスのおかげである(笑)。

とはいえ、モレイラは現状、この条件も満たせていない。

昨年~今年と自国ブラジルや、オーストラリアでGI勝利はあるんだが、このランキングに載るようなレースは現状なさそうだし、さすがに今年の桜花賞がTOP100入りすることはほぼあり得ないだろう。

そうなると、モレイラとすれば海外の主要レースで有力馬に騎乗して、そこで強い勝ち方をする必要があるということになる。例えば、日本の現役トップクラスの馬を海外GIに遠征させて、チャンスを窺うというような形だな。

あくまで過去のランキングからの判断材料にはなるが、日本馬にとって馴染みのある香港国際競走は50位以内にランクインできる可能性がそれなりにある。もしチャンスがあるとすればこの辺だろう。

決して簡単なハードルではないんだけど、それでも今年までのルールよりは多少はマシになったと言えると思う。

あと、ちょっとルール表記で不透明なのが、例えば「桜花賞と海外指定GIの勝利をそれぞれ1勝ずつすれば、それでOKとされる」みたいなことがあり得るのかどうか。そこまですると、個人的にはかなり“忖度”した感じが強いな~と思っちゃうけどな。

モレイラ

なお、この件はモレイラ本人以上に、モレイラの来日を望む関係者にとって重要な話なんじゃないかと思っている。

ノーザンFが動くのか、それともモレイラを重用する堀厩舎が策を講じるのか、この先のことはまだ分からないが、このルール変更についてはこの先の外国人騎手の来日状況を大きく揺るがすことは間違いないだろう。ぜひ、覚えておいていただきたいところだ。

加藤

関西ジョッキーは「だいたい友達」
幼少期に競馬場で武豊を生で見てジョッキーを志し「圧倒的に勝ちまくるユタカとアンパンマンが幼少期のヒーローだった」(本人談)。残念ながら競馬学校入学の規定に合わず夢を断念するも、同じ世界で働きたい一心で業界に飛び込んだ。「最後に馬券を託すのは騎手。騎手なくして馬券は買えない」が座右の銘で、関西ジョッキーはだいたい友達を公言し、騎手エージェント事情にも深く精通している。

騎手を志しただけあって騎乗技術にはとてもうるさく、ほとんどの騎手のクセを手の内に収めている。横山武史、坂井瑠星など、サイト内でブレイクを予告した若手騎手が軒並み大活躍中。

#加藤の記事を読む