今朝になってWASJに参戦する外国人騎手に変更があった。リサ・オールプレスが自国ニュージーランドでのレース中の落馬によって脊椎骨折、しかもボルトを入れる手術をしたほどの重傷を負ったという。非常に残念かつ心配なニュースだ。どうかお大事に……。
これによってリサは出場辞退となり、代役は香港のカリス・ティータンになる見込みとのこと。香港がオフシーズンということで白羽の矢が立ったようだな。
なお、懸念として挙げていたチャクイウ・ホーの騎乗停止問題は何とかクリアできそうとのことで、コチラは一安心と言っても良さそうだ。
以下、昨日8/7(水)更新分です
ども、騎手情報担当の加藤です。
ちょっと先週末から色々とあって、バタバタしていて申し訳ない。今後に向けた反省会だったり、色々調べてほしい案件があると頼まれていたりでね。
さて、今日は先週オレが書いた記事の“答え合わせ”だ。先週末にも少しだけ触れさせてもらったんだけど、今日は時間をとって解説しよう。
▼先週書いた記事がコチラ
突如発表された『短期免許で来日する騎手のルール変更』という話。それについて、オレは「誰が得をするのか、一番はジョアン・モレイラじゃないのか?」という話をした。
その後、先週末になってJRAから今年のワールドオースタージョッキーズ(WASJ)に参戦する外国人騎手の詳細が発表された。選出された騎手は下記の通り。
リサ・オールプレス(ニュージーランド)
※女性騎手
チャクイウ・ホー(香港)
ダミアン・レーン(オーストラリア)
ジョアン・モレイラ(ブラジル)
タイグ・オシェア(UAE)
デルフィンヌ・サンチアゴ(フランス)
※女性騎手
先週の記事でも書いたように、チャクイウ・ホーやリサ・オールプレスの来日については結構前から独自ルートで聞いていた。ただ、正直なところ他の騎手についてはこの時に初めて知ったんだよな。
※そもそもの話、この時期にWASJを開催したところで、主要国の海外競馬は大半がシーズンの真っ最中だ。オフなのは香港とUAEくらいなもので、そこからホーとタイグ・オシェア(つい先日まで短期免許で参戦)については選出がしやすかったものと思われる。
WASJが旧:ワールドスーパージョッキーズシリーズ(WSJS)から開催時期や名称を変えて、夏の札幌開催で定着しつつはあるものの、本当に腕の立つ一流ジョッキーを世界各国から呼ぶには時期として微妙なんだよな。
ちょっと気になるのは、ホーはこの夏にイギリスを拠点に武者修行に励んでいたんだけど、その期間中にムチに関する制裁を複数受けてしまい、騎乗停止処分を受けているという現地報道だ。恐らく自国(香港)とのルールの違いに苦しんだんだろう。
その騎乗期間が結構長いみたいで、WASJの開催週に被っているらしい。これが日本でどういう扱いになるかがまだ不透明で、最悪の場合は出場できないなんてこともなくはない。
残るメンツを見てみると、デルフィンヌ・サンチアゴはフランスの女性騎手の中でも先駆け的な存在として知られている。リサと並び、近年のWASJに目立つ“女性ジョッキー枠”ということになるな。
ダミアン・レーンについては、実はこの夏は札幌開催で短期免許を取得するプランがあったんだ。結局、レーン側に色々が事情があって宝塚記念週のみの来日に留まったけどな。なので、これはある意味で既定路線と言える。
そして、ジョアン・モレイラだ。ご丁寧に短期免許のルール変更をこのタイミングで実施して、その上でWASJに選出された。いくらなんでも分かりやすすぎないか?(苦笑)。
大真面目にもう少し考える
このルール変更で何が起きる?
……と、ここで話を終わらせても何も得られるものはないので、もう少し掘り下げて考えてみよう。
確かに、このルール改正で今年一番の“得”があるのはモレイラで間違いない。ただ、来年以降を考えると、恐らく『WASJに外国人騎手をより呼びやすくする』という魂胆があるんじゃないかと思うんだよな。要するに、ニンジンをぶら下げたということだ。
ニンジン作戦!
先述の通り、この時期は一流ジョッキーを呼ぶには難しい時期なんだ。このルールが浸透し始めた来年以降、WASJに参戦する外国人騎手の顔ぶれが変わるかどうかはひとつポイントになる。
そして、このルール変更とモレイラの選出によって、今年のWASJがどういう風になるか。
『抽選でモレイラに良い馬が偏って選ばれる』なんてことは起きないと思うが、公開抽選じゃないからな……。
いや、公開でも怪しまれる形式はいくらでもあるか。オリンピックでもそんな話題があったところだな。
※イメージ写真に
特に他意はありません
※リネール選手が選ばれたことに
特にツッコミはありません
個人的に注目しているのは、モレイラの短期免許チャンスを阻むべく、日本人ジョッキーのマークが厳しくなるんじゃないかというところ。ただ、これも後に遺恨を残す可能性がゼロとは言えない。
まだ明確なデータが揃っているわけではないが、モレイラが勝てるチャンスがあったヴィクトリアマイルで、マスクトディーヴァの進路をブロックするガッツ騎乗を見せたドゥアイズの鞍上・鮫島克駿が、それ以降一度も堀宣行厩舎の馬に騎乗していないのは気になるところ。
鮫島克駿×堀厩舎コンビ
2023年以降~今年のヴィクトリアマイル前まで
(4-2-0-11) 勝率23.5%
今年3月・日経賞(GⅡ)をシュトルーヴェで勝利
鮫島克駿×堀厩舎コンビ
ヴィクトリアマイル以降~先週まで
騎 乗 数 ゼ ロ
この時は好騎乗に
してやられたんだが……
騎乗機会がパッタリ止まった
一応フォローしておくと、堀厩舎が多数の馬を送り込んでいる北海道シリーズは鮫島駿が参戦しているとはいえ、厩舎がバックアップしている佐々木大輔が主戦を務めているという背景がある。そりゃあ“鮫島駿に馬は回ってこねえか”って話ではあるんだ。
※佐々木大輔の父親は堀厩舎所属の調教助手。かつては二ノ宮厩舎でエルコンドルパサーやディーマジェスティを手掛けたことでも知られる。そして堀センセイは助手時代、二ノ宮厩舎に所属していたんだよな。そういう繋がりもあって積極的に乗せているのも頷ける。
とはいえ、モレイラを重用している堀厩舎が、その来日チャンスを阻んだ鮫島駿に関して怒っているとしても不思議ではないんだよな。理不尽に思える話だが。
やや収拾がつかなくなってきた上に、割と批判的なことばかり書いてきたので、最後にひとつ大事なことを言っておくと……。
上記した今年のWASJの参戦ジョッキーの確定により、「彼らの来日に合わせて、WASJ以外のレースで騎乗馬を用意する」という流れが急激に加速しているのは事実だ。
中身は過剰に人気して飛ぶような馬もいるだろうし、そうなると“逆張り”のチャンスになる。
逆に、一気の鞍上強化でヤリが炸裂するケースも出てくるだろう。WASJ週ならではのジョッキーネタは今から楽しみにお待ちいただきたいところだ。
加藤
関西ジョッキーは「だいたい友達」
幼少期に競馬場で武豊を生で見てジョッキーを志し「圧倒的に勝ちまくるユタカとアンパンマンが幼少期のヒーローだった」(本人談)。残念ながら競馬学校入学の規定に合わず夢を断念するも、同じ世界で働きたい一心で業界に飛び込んだ。「最後に馬券を託すのは騎手。騎手なくして馬券は買えない」が座右の銘で、関西ジョッキーはだいたい友達を公言し、騎手エージェント事情にも深く精通している。
騎手を志しただけあって騎乗技術にはとてもうるさく、ほとんどの騎手のクセを手の内に収めている。横山武史、坂井瑠星など、サイト内でブレイクを予告した若手騎手が軒並み大活躍中。
#加藤の記事を読む

ども、騎手情報担当の加藤です。
ちょっと先週末から色々とあって、バタバタしていて申し訳ない。今後に向けた反省会だったり、色々調べてほしい案件があると頼まれていたりでね。
さて、今日は先週オレが書いた記事の“答え合わせ”だ。先週末にも少しだけ触れさせてもらったんだけど、今日は時間をとって解説しよう。
▼先週書いた記事がコチラ
突如発表された『短期免許で来日する騎手のルール変更』という話。それについて、オレは「誰が得をするのか、一番はジョアン・モレイラじゃないのか?」という話をした。
その後、先週末になってJRAから今年のワールドオースタージョッキーズ(WASJ)に参戦する外国人騎手の詳細が発表された。選出された騎手は下記の通り。
リサ・オールプレス(ニュージーランド)
※女性騎手
チャクイウ・ホー(香港)
ダミアン・レーン(オーストラリア)
ジョアン・モレイラ(ブラジル)
タイグ・オシェア(UAE)
デルフィンヌ・サンチアゴ(フランス)
※女性騎手
先週の記事でも書いたように、チャクイウ・ホーやリサ・オールプレスの来日については結構前から独自ルートで聞いていた。ただ、正直なところ他の騎手についてはこの時に初めて知ったんだよな。
※そもそもの話、この時期にWASJを開催したところで、主要国の海外競馬は大半がシーズンの真っ最中だ。オフなのは香港とUAEくらいなもので、そこからホーとタイグ・オシェア(つい先日まで短期免許で参戦)については選出がしやすかったものと思われる。
WASJが旧:ワールドスーパージョッキーズシリーズ(WSJS)から開催時期や名称を変えて、夏の札幌開催で定着しつつはあるものの、本当に腕の立つ一流ジョッキーを世界各国から呼ぶには時期として微妙なんだよな。
ちょっと気になるのは、ホーはこの夏にイギリスを拠点に武者修行に励んでいたんだけど、その期間中にムチに関する制裁を複数受けてしまい、騎乗停止処分を受けているという現地報道だ。恐らく自国(香港)とのルールの違いに苦しんだんだろう。
その騎乗期間が結構長いみたいで、WASJの開催週に被っているらしい。これが日本でどういう扱いになるかがまだ不透明で、最悪の場合は出場できないなんてこともなくはない。
残るメンツを見てみると、デルフィンヌ・サンチアゴはフランスの女性騎手の中でも先駆け的な存在として知られている。リサと並び、近年のWASJに目立つ“女性ジョッキー枠”ということになるな。
ダミアン・レーンについては、実はこの夏は札幌開催で短期免許を取得するプランがあったんだ。結局、レーン側に色々が事情があって宝塚記念週のみの来日に留まったけどな。なので、これはある意味で既定路線と言える。
そして、ジョアン・モレイラだ。ご丁寧に短期免許のルール変更をこのタイミングで実施して、その上でWASJに選出された。いくらなんでも分かりやすすぎないか?(苦笑)。
大真面目にもう少し考える
このルール変更で何が起きる?
……と、ここで話を終わらせても何も得られるものはないので、もう少し掘り下げて考えてみよう。
確かに、このルール改正で今年一番の“得”があるのはモレイラで間違いない。ただ、来年以降を考えると、恐らく『WASJに外国人騎手をより呼びやすくする』という魂胆があるんじゃないかと思うんだよな。要するに、ニンジンをぶら下げたということだ。

ニンジン作戦!
先述の通り、この時期は一流ジョッキーを呼ぶには難しい時期なんだ。このルールが浸透し始めた来年以降、WASJに参戦する外国人騎手の顔ぶれが変わるかどうかはひとつポイントになる。
そして、このルール変更とモレイラの選出によって、今年のWASJがどういう風になるか。
『抽選でモレイラに良い馬が偏って選ばれる』なんてことは起きないと思うが、公開抽選じゃないからな……。
いや、公開でも怪しまれる形式はいくらでもあるか。オリンピックでもそんな話題があったところだな。

※イメージ写真に
特に他意はありません

※リネール選手が選ばれたことに
特にツッコミはありません
個人的に注目しているのは、モレイラの短期免許チャンスを阻むべく、日本人ジョッキーのマークが厳しくなるんじゃないかというところ。ただ、これも後に遺恨を残す可能性がゼロとは言えない。
まだ明確なデータが揃っているわけではないが、モレイラが勝てるチャンスがあったヴィクトリアマイルで、マスクトディーヴァの進路をブロックするガッツ騎乗を見せたドゥアイズの鞍上・鮫島克駿が、それ以降一度も堀宣行厩舎の馬に騎乗していないのは気になるところ。
2023年以降~今年のヴィクトリアマイル前まで
(4-2-0-11) 勝率23.5%
今年3月・日経賞(GⅡ)をシュトルーヴェで勝利
ヴィクトリアマイル以降~先週まで
騎 乗 数 ゼ ロ

この時は好騎乗に
してやられたんだが……
騎乗機会がパッタリ止まった
一応フォローしておくと、堀厩舎が多数の馬を送り込んでいる北海道シリーズは鮫島駿が参戦しているとはいえ、厩舎がバックアップしている佐々木大輔が主戦を務めているという背景がある。そりゃあ“鮫島駿に馬は回ってこねえか”って話ではあるんだ。
※佐々木大輔の父親は堀厩舎所属の調教助手。かつては二ノ宮厩舎でエルコンドルパサーやディーマジェスティを手掛けたことでも知られる。そして堀センセイは助手時代、二ノ宮厩舎に所属していたんだよな。そういう繋がりもあって積極的に乗せているのも頷ける。
とはいえ、モレイラを重用している堀厩舎が、その来日チャンスを阻んだ鮫島駿に関して怒っているとしても不思議ではないんだよな。理不尽に思える話だが。
やや収拾がつかなくなってきた上に、割と批判的なことばかり書いてきたので、最後にひとつ大事なことを言っておくと……。
上記した今年のWASJの参戦ジョッキーの確定により、「彼らの来日に合わせて、WASJ以外のレースで騎乗馬を用意する」という流れが急激に加速しているのは事実だ。
中身は過剰に人気して飛ぶような馬もいるだろうし、そうなると“逆張り”のチャンスになる。
逆に、一気の鞍上強化でヤリが炸裂するケースも出てくるだろう。WASJ週ならではのジョッキーネタは今から楽しみにお待ちいただきたいところだ。

加藤
関西ジョッキーは「だいたい友達」
幼少期に競馬場で武豊を生で見てジョッキーを志し「圧倒的に勝ちまくるユタカとアンパンマンが幼少期のヒーローだった」(本人談)。残念ながら競馬学校入学の規定に合わず夢を断念するも、同じ世界で働きたい一心で業界に飛び込んだ。「最後に馬券を託すのは騎手。騎手なくして馬券は買えない」が座右の銘で、関西ジョッキーはだいたい友達を公言し、騎手エージェント事情にも深く精通している。
騎手を志しただけあって騎乗技術にはとてもうるさく、ほとんどの騎手のクセを手の内に収めている。横山武史、坂井瑠星など、サイト内でブレイクを予告した若手騎手が軒並み大活躍中。