
騎手情報担当の加藤です。こんばんは。
日経新春杯に関する記事も別で準備していたが、今日は先週起きた競馬の中から『武豊騎手の騎乗停止処分』に関する話題をしたい。
これは会員様からもいくつか質問があって、
「結構重たい処分になった気がします」とか「他の斜行案件と今回の違いはどの辺りにあるんですか?」「加藤さんの見解が知りたいです」という風なメールが届いていたと聞いています。ご連絡どうもありがとう。
それは月曜日のシンザン記念でのこと。タイセイカレントに騎乗したユタカさんが、直線で最内から外に進路を取った際に複数の馬の進路を妨げたとして、9日間(中央開催4日間)の騎乗停止処分を受けた。

タイセイカレントに騎乗も……
現代の騎乗停止ルールにおいて、レース中のトラブルで9日間(中央開催4日間)の騎乗停止処分はなかなか大きい部類に当てはまる。『弘法にも筆の誤り』ということわざがあるが、まさにそれがぴったりと当てはまるような事象になってしまった格好だな。
なお、ユタカさんの騎乗停止は2019年6月の安田記念でロジクライに騎乗した時に、スタート直後に内に切れ込んで開催1日分の騎乗停止処分を受けて以来だから、5年以上前の話になる。それくらい、普段から安全意識が高く、かつラフな騎乗をしない騎手ということだ。
今回の件についても“邪魔しようと思ってやってるワケじゃない。最大限気を配った中で起きてしまった”という事象だとは思う。
「そんなの斜行なんて大体そうだろ」という意見はごもっとも……のように見えて、実際は“リスクを冒してでもココは突っ込んでやろう”という気持ちの方が先走ってるケースもあるからね。
そんな中でも、基本的にユタカさんはレースを壊すことはしないので、今回の件についても一瞬の判断で選んだ進路取りだとは思う。長年見させてもらっているから、この部分に関しては信頼したい。
また、併走している馬に外から圧をかけて出させないようにするとか、逆に内から少しずつ張って外に進路を確保するのもテクニックと呼ぶべき部分もあるからね。

シンザン記念のスタート直後
ところが誤算だったのは、進路を争う形になった外のレーヴブリリアントの脚色が思った以上にあったことと、レーヴが内からの接触に対して想定以上に反応した結果、さらに外に居た複数の馬たちの進路にも大きく影響を与えてしまったというところじゃないかな。
ああなってしまった以上、制裁対象になってしまうのはやむを得ないところだと思う。
ただ、中央開催2日分の騎乗停止か、はたまた4日分か……というところのジャッジは悩ましいし、それこそユタカさんが「ちょっと重い制裁になってしまった」というのも理解はできるな。
このユタカさんの言葉、文字にすると制裁の重さに不満を述べているように切り取られそうだけど、当然ながらレジェンドは起きた事象に関して深く反省している。その上での本音だから、受け手は過剰に問題視するべき事象ではないよ。
そうは思いつつも、騎乗停止まで発展した事案としては“まあ、そうなるよな”というのが個人的な見解です。
なので、直近で起きている斜行事案……例えば京都金杯のサクラトゥジュールとか、昨年秋で言えばエリザベス女王杯のレガレイラ絡みの動きとか、それらとはまた程度が異なるので、比較して裁定が厳しいってこともないと思っている。
サクラトゥジュールに関してもかなり強引さは否めなかったが、それで影響を受けた馬は今回に比べると少ないというのもまた事実。レガレイラについては、複数の馬の動きでゴチャゴチャしたところもあるしな。
しかしな~、これでプロキオンS週(※昨年までの東海Sの立ち位置)と、その翌週も含めて騎乗停止になってしまったのはかなり痛い。それこそプロキオンSにはサンライズジパングで予定していたし、定年間近の音無厩舎の管理馬でもあるし力が入るところだったはずだ。他にもいくつか良さげな馬も居たからね。

武豊騎手
というわけで、騎乗停止に関する話題はここまでとします。本当は園田で亡くなったジョッキーの話も触れたかったけど、堀江さんが話題に挙げてくれたのでそちらもご覧いただければと思います。
なお、1件だけお問い合わせが来ていましたが、
『この前紹介されていた元騎手候補生の朝倉さん、女性版SASUKEの“KUNOICHI”に出てますよ!』
という話については、取材活動やレースの振り返りの合間に見ようと思っている。こんな部分まで反応していただけて感謝申し上げます。いや本当に……(汗)。

加藤
関西ジョッキーは「だいたい友達」
幼少期に競馬場で武豊を生で見てジョッキーを志し「圧倒的に勝ちまくるユタカとアンパンマンが幼少期のヒーローだった」(本人談)。残念ながら競馬学校入学の規定に合わず夢を断念するも、同じ世界で働きたい一心で業界に飛び込んだ。「最後に馬券を託すのは騎手。騎手なくして馬券は買えない」が座右の銘で、関西ジョッキーはだいたい友達を公言し、騎手エージェント事情にも深く精通している。
騎手を志しただけあって騎乗技術にはとてもうるさく、ほとんどの騎手のクセを手の内に収めている。横山武史、坂井瑠星など、サイト内でブレイクを予告した若手騎手が軒並み大活躍中。