個性派記者の本音トーク 加藤

【富士ステークス】秋春のマイル王が参戦するが、前哨戦で死角あり!

個性派記者の本音トーク 加藤
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ども、騎手情報担当の加藤です。

皆さんはジョッキーがレース中にどんなことを考え、どんな技術を駆使しているかご存じだろうか。

今月4日から東京競馬場内のJRA競馬博物館で新3D-CG映像体験「ジョッキー図鑑」、体験型新アトラクション「RIDE ON GⅠ HORSE」がオープンし、ジョッキーの道具へのこだわりや、木馬を使った騎乗姿勢の解説など、その知られざる世界を深く知れるイベントが行われている。

JRAにジョッキーカメラを導入した将雅(川田騎手)も、今回のJRA新企画に携わっている。

オレは、騎手情報担当として多くの騎手と話すが、彼らは常に危険と隣り合わせの中で勝負している。競馬は馬が主役と思われがちだが、その能力を最大限に引き出すのは騎手の腕によるもの。

このイベントを通じて騎手についてより深く理解し、人馬ともに応援していただければと思う。イベントは今年の12月28日まで開催されているので、東京競馬場に足を運んだ際は、JRA博物館に立ち寄ってみてほしい。

いざ、マイル王へ!
富士Sの出走馬

さて、今週は東京芝1600mにて富士ステークスが行われる。

競走名の「富士」は富士山から由来しており、晴れた日に東京競馬場の「フジビュースタンド」から見ることができる。

また、本レースは2014年から優勝馬にはG1・マイルCSの優先出走権が与えられており、G1戦線を見据える実力馬たちが多く出走する。

今年はG1・安田記念を制したジャンタルマンタルや、昨秋のG1・マイルCSを制したソウルラッシュ、昨年のG2・富士Sを制したジュンブロッサムなど、G1級の実力馬が顔を揃えた。

上位人気は高確率で好走!

まずは富士Sの過去10年の人気別成績を確認していくと、

■富士Sの人気別成績
※過去10回(2015年~2024年)
人気着別度数勝率連対率複勝率
1番人気4- 2- 0- 4/ 1040.0%60.0%60.0%
2番人気2- 0- 2- 6/ 1020.0%20.0%40.0%
3番人気1- 4- 1- 4/ 1010.0%50.0%60.0%
4番人気2- 3- 1- 4/ 1020.0%50.0%60.0%
5番人気1- 0- 1- 8/ 1010.0%10.0%20.0%
6~10人気0- 1- 4- 45/ 500.0%2.0%10.0%
11~人気0- 0- 1- 50/ 510.0%0.0%1.9%

上位人気馬の成績が良く、紛れの少ない東京芝1600mらしく、一見すると波乱の余地は少ないように見える。

今回人気の中心になりそうなのは、マイル王者のジャンタルマンタルソウルラッシュになるだろう。ただし「ジャンタルマンタルとソウルラッシュは鉄板」とも言い切れない

上位人気馬が敗れるパターンについて、過去のデータから検証しよう。

斤量を背負うと不利になる

富士Sは別定戦で、下記斤量設定が採用されている。

■基本重量
・3歳馬:55㎏(牝馬53㎏)
・4歳馬:57㎏(牝馬55㎏)

▼実績に応じて斤量が増加する
・G1勝ち馬 ⇒2㎏増
・G2勝ち馬 ⇒1㎏増

※牝馬限定戦
・G1勝ち馬 ⇒1㎏増

※2024年10月11日以前のG1勝ち馬(牝馬限定競走を除く) ⇒1㎏増
※ただし2歳時の成績を除く

このルールにより、ジャンタルマンタルソウルラッシュは斤量59㎏で出走する。過去10年で、59㎏で出走したのは、2018年のペルシアンナイトただ1頭のみで、結果は5着。さらに、斤量58㎏でさえも[0-4-1-4/9]と勝利した例はない。

ただし、2019年1着のノームコアはG1馬のため56㎏を背負っていた。当時は現在の斤量設定と比較して1㎏軽いため、ノームコアは現在の設定で57㎏(牡馬換算なら59㎏)を背負い勝っていたことになる。低確率とはいえ、例外的に斤量を背負っても勝つことはある。

対照的に、昨年は前走関屋記念3着から斤量57㎏で臨んだジュンブロッサムや、一昨年は一年以上、重賞勝ちがなかったナミュールが斤量55㎏(牡馬換算で57㎏)で制した。富士Sは重賞で勝ち切れないものの好走実績のある馬が斤量的な恩恵を受けて勝利するケースが目立つ。

今年のメンバーでは、G3・東京新聞杯を制したウォーターリヒト、G1・安田記念2着のガイアフォース、マイル重賞を3戦連続で掲示板内のキープカルムなどが斤量57㎏で出走可能。斤量面で有利に運べるのは間違いなさそうだ。

勝ち馬は3~5歳のみ

年齢でも大きく成績を分けている。実際に過去10年の富士Sの年齢別成績を確認してみると、

■富士Sの年齢別成績
※過去10回(2015年~2024年)
年齢着別度数勝率連対率複勝率
3歳3- 1- 3- 26/ 339.1%12.1%21.2%
4歳5- 4- 1- 22/ 3215.6%28.1%31.3%
5歳2- 3- 6- 36/ 474.3%10.6%23.4%
6歳0- 2- 0- 25/ 270.0%7.4%7.4%
7歳0- 0- 0- 9/ 90.0%0.0%0.0%
8歳0- 0- 0- 2/ 20.0%0.0%0.0%

馬券圏内のほとんどが3歳から5歳で占められている。3歳馬は、この時期になると古馬との実力差もほとんどないが、斤量が2㎏軽くなるため、有利に働きやすい。昨年3着だったロジリオンもG1・NHKマイルで3着に好走経験があり、人気上位が馬券圏内になりやすいレースながら9番人気で3着に好走した。

そして特に、勝率・連対率でトップを誇るのは、充実期を迎える4歳馬だ。もともとクラシック路線や3歳のマイル路線で好走経験がある馬がさらに力をつけ、秋のG1マイル戦線に向け、好走する傾向にある。

一方で6歳以降は勝ち星がなく、複勝率も大きく下がる。直線の長い東京コースでは、鋭い末脚が求められる。実際に、富士Sでは過去10年で上がり1位だった馬は[3-4-1-2/10]と8割が馬券になるほどだ。一般的に年齢を重ねるとこの瞬発力に陰りが見えるため、厳しい結果になりやすいのだろう。

4歳のジャンタルマンタルはまさに充実期だが、実績豊富なソウルラッシュは7歳。勢いのある若い世代を相手にするのは苦戦を強いられる可能性があるな。

まとめ

秋のマイル路線を歩む実力馬にとって、最大の目標はG1・マイルCSやその先の香港マイルになる。そのため、この富士Sではあくまで本番を見据えた叩き台、つまりレース勘を取り戻すためのステップレースという位置づけの可能性がある。

一方で、ここを勝ってG1・マイルCSの優先出走権を是が非でも手にしたい馬たちは、100%の仕上げで勝ちに来る。

昨年も秋の始動戦で叩きとしてここを使ってきたソウルラッシュが、100%で臨んだジュンブロッサムに敗れた。この本気度の差が、レース結果に大きな影響を与えることは十分に考えられる。

もちろん、G1馬であるジャンタルマンタルソウルラッシュの能力は疑いようがない。これらの上位人気馬が敗れるパターンをあっさりと乗り越え、好走する可能性も十分にある。ただ、特にジャンタルマンタルは圧倒的な1番人気が予想される。だからこそ、その逆転の目を考えることに馬券の妙味が生まれる。

今回の富士Sは特にG1級の実力馬が顔を揃えている。王者の死角に目を向けたうえで、馬券攻略をしていきたいな。

加藤

関西ジョッキーは「だいたい友達」
幼少期に競馬場で武豊を生で見てジョッキーを志し「圧倒的に勝ちまくるユタカとアンパンマンが幼少期のヒーローだった」(本人談)。残念ながら競馬学校入学の規定に合わず夢を断念するも、同じ世界で働きたい一心で業界に飛び込んだ。「最後に馬券を託すのは騎手。騎手なくして馬券は買えない」が座右の銘で、関西ジョッキーはだいたい友達を公言し、騎手エージェント事情にも深く精通している。

騎手を志しただけあって騎乗技術にはとてもうるさく、ほとんどの騎手のクセを手の内に収めている。横山武史、坂井瑠星など、サイト内でブレイクを予告した若手騎手が軒並み大活躍中。

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