個性派記者の本音トーク 黒木

【トップナイフの敗因】“膝蓋が外れた”ってどういう事象?【菊花賞】

個性派記者の本音トーク 黒木
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どうも黒木です。今日は普段取り扱わない珍しい話題として『馬の造り』に関する話をしたい。

普段、外厩や牧場をメインに情報収集を重ねている関係上、馬体の見方については人よりもノウハウがあると思っている。

日頃の取材で牧場を渡り歩いていると馬見のスペシャリストのような関係者と親しくなる機会は多いし、私自身も自らの目で何万頭と見てきたから、自然と詳しくなった……という感じだ。

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牧場でのワンシーン

それと共に、解剖学的な観点で馬の造りを勉強する機会もあったし、馬体から適性を見極める技術も学んできたりもしている。「あの馬は○○の造りが怪しいから故障しやすそうだな」とか「芝ばかり使われているが、馬体からはどう見てもダート向きなんだが……」なんて思うこともしょっちゅうある。



さて、本題。

先週の菊花賞はドゥレッツァの勝利で幕を閉じた。春の活躍馬が揃って後塵を拝したワケだが、それにしてもルメールの思い切った逃げの手は見事の一言に尽きる。それでいて中盤はしっかりと脚をタメて、後続が早めに進出してきても動じずに仕掛けのタイミングも完璧だった。

そんな中、14着に敗れたトップナイフ陣営のコメントに注目。最内枠を引いたものの、スタートで出遅れて最後方からになってしまい、中盤で挽回を試みたが最後はアッサリと沈んでしまった格好だ。


この“スタートは最後方から……”という点だけを切り取って、鞍上・横山典がよく見せる『ポツン戦法』だと勘違いした方も結構多いようだが、今回に関しては真相が全く異なる。

それを証明するのが、調教師がレース後に発した「ゲートの中で膝蓋(しつがい)が外れるアクシデントがあり、序盤から出していける状態じゃなかった」というコメントだ。

今回の『膝蓋が外れる』という事象、ピンと来ない方が大半だろう。

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膝蓋とはその字のごとく、人間で言えば“膝の皿”あたりを指している。

そして膝蓋が外れるというのは、人間で例えると『肩の関節が緩くて、それが外れてしまった』という“脱臼”のような症状に近い。騎手で言えばデビュー当初の古川奈穂だったり、かつて菊花賞のレース中に肩が外れたまま騎乗馬を2着に持ってきたイオリッツ・メンディザバルみたいなものか。

馬で脱臼と聞くと、予後不良に至るような重症ケースも多々あるが、この膝蓋が外れる症状に関しては習慣的な発症が大半で、すぐに整復されることも多いという。これもさっき言った肩が緩い症状に似ているな。『肩に脱臼癖があって、自分ですぐに戻せる』ようなもの……ということだ。

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※画像はイメージです

この症状、特に競走馬としてデビューする前の調教過程に居る若い馬には結構見られがちなんだ。よくお世話になっている牧場関係者に聞いたところ「自分が乗っていた馬でもよくありましたよ。走り出しの時がカクカクして“ああ、これは膝蓋が外れてるな”とすぐ分かります」という返答だった。

また「年を重ねて関節がしっかりとしてきたら発症しなくなることが多い」とのこと。ちなみに、この“自分が乗っていた馬”というのは後に重賞を勝つまでに至ったという。


そして、これもまた重要なポイントだが、競馬界での俗語のように使われる『トモがハマる』と表現される事象とは全く別のことだ。この『トモがハマる』というのは、“序盤こそ後ろからになってしまうが、走っていくうちに後ろ脚が上手く連動していくようになり、だんだんとスピードに乗っていくさま”を表現していることが多い。

それに対し、今回の『膝蓋が外れる』はれっきとしたアクシデントだ。最内枠を引いて勝負度合いが高かった陣営としては無念だろう。また、この馬の出方次第でレースの全容も大きく変わっただろうな。


ただ、レース後に敗因がハッキリと分かったことは大きな収穫と言える。この症状は手術で改善ができるそうなので、恐らくしっかりと立て直しを図られることになるはずだ。

今回、CHECKMATEとしても穴候補として大いに期待していただけに悔しい結果になったが、復帰した暁には馬券的に狙えるタイミングがまた来るだろう。その時に備えてしっかりと休養中の動向も追いかけておきたい。

黒木

モットーは目と足で稼ぐ!外厩請負人
毎週、競馬場に通っているうちに他の施設にも興味を持ち、生産の現場や、外厩・牧場などを渡り歩く日々を送っており、全国各地の牧場施設で顔が売れているという。一時は某牧場での勤務も経験しており、外厩での調整ノウハウを肌身を持って経験したことも。

競馬新聞で得られる情報と、現地で肌で感じた情報とのギャップに疑問を抱き、それを馬券に落とし込むのが身上。

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