個性派記者の本音トーク 佐山

【ノリさん好調】横山典弘の凄さは“後輩”がよく分かっている……勝負の依頼にご用心!

個性派記者の本音トーク 佐山
佐山

どうも、関東もますます賑わっております。美浦の佐山です。

先週末に騎手情報担当の加藤クンが執筆してくれた『3月デビュー予定の新人騎手(競馬学校41期生)』に関するコラムは今後に向けて非常に大事な話だった。

▼加藤記者の記事はコチラ

もちろん、関東でデビューする新人たちは俺もしっかりとチェックしていて、加藤クンとも逐一情報を共有している。

そんな中で、今週火曜日に卒業式と共に行われた41期生たちによる最後の模擬レースは遠藤汰月クンが優勝。そう、最後まで舟山クンと遠藤クンの独壇場になったんだよな。お互いに3勝ずつして、残りのレースは現役騎手が勝つというかなり珍しい結果になった。

加藤クンもコラムで言っていたように、模擬レースの結果が決して全てではない。とはいえココまで図抜けた成績を残している舟山・遠藤の両名は必然的に大きな期待がかかるというモノ。ぜひ名前を覚えておいていただきたい。


さて、スーパーフレッシュな新人たちのデビューも注目だが、スーパー大ベテランの活躍に注目したい。ズバリ、ノリさん(横山典弘)だ。

昨年暮れからJRA最年長ジョッキーのヨシトミさん(柴田善臣騎手)がケガで療養に入っているため、元気に騎乗している騎手たちの中では最古参となるんだが、今月23日は57歳を迎えようとしている中、メチャクチャ元気だよな~。

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横山典弘騎手
昨年の日本ダービーにて

元より『勝ち星の量より質』『自分で馬を作っていくスタイル』『信頼関係を築ける陣営との縁を大事に乗っている』という方向性が見受けられる中、近年はそれがより顕著になっていると言ってイイだろう。

それにしても、彼が関西を拠点にし始めたのが2021年の秋口だったから、もう結構な年月が経っているんだなあ。


さて、そんなノリさん……実は今年に入ってからかなり好調なペースで勝ち星を稼いでいる。

先週終了時点で9勝を挙げ、勝率は20.5%。騎乗数が少ない障害専門のジョッキーを除くと、勝率ではルメール(25.7%)、川田将雅(20.6%)に次ぐ3番目の好成績となっている。

もちろん騎乗数が少ない現時点での数字……ましてや1ヶ月半時点のモノだからこのまま推移するとは言い難いが、それでもかなりの高水準だ。何なら、自身のキャリアで最も数字が良かった2010年()にマークしている勝率20.2%を上回っている。

このペースで年末まで行けば、残り36勝まで迫っているJRA通算3000勝を今年中に達成する可能性だってあるな。

この年は120勝を挙げて全国リーディングを獲得。ブエナビスタに騎乗してヴィクトリアマイルを制するなど顕著な活躍が目立った。9月下旬に落馬負傷で頭蓋骨骨折などの重傷を負い、2カ月近くの戦線離脱があった中で熾烈なリーディング争いを制した。

なお、この年は武豊騎手が毎日杯(ザタイキ)の落馬事故で長期離脱という出来事もあった。

加えて、もうひとつ個人的に良い意味で気になった要素がある。それが『最近はどういった調教師とのコンビで勝利を挙げているか』だ。

今年のデータだけだとちょっとサンプルが少ないので、一昨年(2023年)まで広げて見てみよう。

■横山典弘騎手の厩舎別成績
(2023年~先週2/10終了時点)
調教師着別度数勝率連対率複勝率
松永幹夫12-5-14-4915.0%21.3%38.8%
昆貢10-16-18-1206.1%15.9%26.8%
安田翔伍10-4-8-3816.7%23.3%36.7%
本田優4-0-5-1914.3%14.3%32.1%
村田一誠3-1-1-1217.6%23.5%29.4%
菊沢隆徳3-0-4-918.8%18.8%43.8%
大久保龍志3-0-1-923.1%23.1%30.8%
安田隆行2-2-3-912.5%25.0%43.8%
武幸四郎2-2-1-1311.1%22.2%27.8%
鈴木孝志2-1-0-1213.3%20.0%20.0%

昆貢厩舎安田翔伍厩舎については今更詳しく語る必要も無いだろう。彼らが居るからノリさんが栗東を拠点にしたと言っても過言じゃない。もっとも、後者についてはダノンデサイルの乗り替わりの件を発端として、今後どうなるか気になるところではあるが。

それら2厩舎を上回るのが松永幹夫厩舎ミキオさんとノリさんといえば競馬学校時代の同期(2期生)だな。候補生時代からお互いのことを知り尽くした、この世界でしのぎを削ってきた間柄だ。

そして注目したいのがココからだ。本田優厩舎村田一誠厩舎菊沢隆徳厩舎武幸四郎厩舎……。先述したミキオ厩舎も含め、この辺りは皆“元・騎手”という共通点がある。

さらに付け加えると、先週日曜の東京開催で騎乗して勝利したイデアイゴッソウも、元・騎手である小野次郎厩舎の管理馬だったな。

次郎ちゃんがノリさんに騎乗依頼を託したのは実に約4年ぶりだった。これはノリさんが関西を拠点に移したからというのもあるし、その辺りで息子である横山和生が次郎厩舎の馬でコンスタントに結果を出すようになったから、とか色々な背景があった(一部の方には先週末お伝えした裏話です)。

そんな中で、4年の時を経た久々の勝負依頼をキッチリ決めたノリさんは流石の一言に尽きるよな。

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イデアイゴッソウ
(先週出走)

一般の競馬ファンからすると、『横山典弘』と言えばやはり“ポツン”とか“ヤ●ズ”の印象が強い部分はあるだろう。常人の理解が及ばないようなレースは実際にある。

ただ、これについても本人に意図を聞けばしっかり答えてくれることが多い。まあ、昔っから周囲に話しかけづらい雰囲気を出しているところはあるが(笑)。

そして何より、ノリさんの腕や引き出しの多さ、騎乗馬への精密なジャッジ、フィードバックの量・質を間近で分かっているのが、自身も乗り役として凄さを間近で見てきた現・調教師たち……ということなのだろう。


という中で、共同通信杯(G3)では村田一誠厩舎の管理馬リトルジャイアンツに騎乗予定だ。

この馬、3走前の未勝利戦(1着)からコンビを組み始めているんだが、2走前の葉牡丹賞(3着)の時に「この馬、右回りの走りがまだまだダメだ。教えなければいけないことがある」“後輩”である調教師に厳しく言った……という面白いエピソードがある(笑)。

この葉牡丹賞、負けたとはいえ2歳レコードがマークされたハイレベルなレースで、勝ち馬とは『ハナ+アタマ差』の大接戦だったんだけどな。流石というか、求めるハードルが高いぜ。

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リトルジャイアンツ
(共同通信杯出走)

そこから年明けにもう一度中山(前走・若竹賞)を使って、キッチリ勝たせたのだから大したもの。しかもその中間、年末年始を跨いで美浦に滞在し、自分で調教を付けてたんだよな。

そういう経緯を知るだけに、左回りになる今回の方が本質的にはパフォーマンスが上がる可能性がありそう。明け3歳馬については使い詰めできているので状態面を見極めつつ、この後もレース直前までしっかり取材に努めたいところだ。

佐山

栗東から美浦へ…ライバル陣営の情報は任せろ
ビッグボス堀江を師と仰ぎ、かつては同じく記者として栗東で活動していたベテラン。栗東を出たことのない根っから地元民だったが、ある時に関東情報の収集のため美浦に派遣されたことをキッカケに、今では『ライバル陣営』にあたる関東圏の勝負情報を一手に引き受けるリーダー的存在となった。

本人曰く『向こうの水が合っていた』とのことだが、実際は“遊び”の環境が揃う関東圏の生活が楽しくて仕方がないらしい。しかし、仕事には一途であり、その“遊び”も含めて関係者からの本音を引き出す技術は一級品である。

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