重賞担当の山川だ。
ちょっと旬が過ぎた話題になって申し訳ないが、この件だけはどうしても残しておきたかったので書いておきたい。先週の東京新聞杯の件だ。
結果だけを見れば、個人的にも大きく期待していたマスクトディーヴァは出遅れが響き6着に敗れた。
その出遅れの程度は大きく、恐らく1秒近くロスしていただろう。そこから序盤に脚を使ってポジションを押し上げ、最後はメンバー2位の上がり3F:33.2秒の末脚を発揮したが、流石に追い込み切れなかった。
ただ、こんな大雑把なレース内容でも勝ち馬からは0.4秒差だ。出遅れがなければ勝っていただろうし、インを通った馬しか上位争いにならなかった展開を踏まえると、相当強い競馬をしている。
それでも、結果としては“負けは負け”。陣営としても、期待したオレとしても辛いところだが、今回は敗因が明確に分かっているだけに今後に生かすまでだ。
問題は、その敗因である出遅れについて。
実は今回、『マスクトディーヴァだけゲートが開くのが遅かった』ということに、レース直後で気づいた方はどれくらい居ただろうか。オレは一瞬で気づいたし、後からパトロールビデオを見れば一目瞭然だった。
ゲートのトラブルということなら、いわゆる“カンパイ”が適用されそうだけど、そうはなっていない。では、一体何が起きたのかを解説したい。
これは、現場で使用されているゲートの仕組みが影響しているんだ。
堀江さんに「ゲート付近の写真あります?」
と聞いたら何故か園田の写真が届いた
実は、ゲートが開く前に馬が中から前扉を押すと、ゲートの開閉を操っている箇所が作動しなくなって、前扉が開かないようになっている。
自分はそこまで物理とか科学に精通しているワケじゃないので、事細かい説明は省かせてもらうが、概ね下記の通りだ。
これは練習用ゲート
スターターがゲートの開閉を行なう道具(レリーズと呼ぶ)を握ると、ゲートの開閉に関わる箇所……これが電磁石の力で止まってるんだけど、その磁力が失われて前扉が開く仕組みになっている。かなり繊細な仕組みなんだ。
それを、中にいる馬がゲート内から押そうとすると、正常に動作しないようになっているというワケだ。そうしないと、ゲートを簡単に突き破れちゃうからね。
ジョッキーが、ゲート内で待機中に敢えて馬の顔を横に向けている場面はよく見られるだろう。これも馬がゲートを内から押そうとしないように……という意図でやっていることが多いそうだ。
※逆に、中から押す力が強すぎると、それはそれで馬の事故の可能性が上がるので、その場合は前扉が壊れて馬が飛び出せるようになっているワケよ。“敢えて壊す”ことによって衝撃を逃がすってことね。
だから、その場合はその枠のゲートが使えなくなるため、外枠発走になる。「前扉が破損したため、外枠発走に~」というアナウンスに聞き覚えがある方は多いだろう。
というわけで、今回に関しては“ただ単にゲートの出が遅かったというだけではなく、そもそも前扉が開くのが遅いんだから、出られないよね”という不幸な話だった。
一応、馬の突進を防げなかったという点で、責任は騎手……ということになっている。現に、岩田望来は制裁を受けているからな。
・マスクトディーヴァ号は,枠内駐立不良〔突進〕。
・マスクトディーヴァ号の騎手岩田望来は,発馬機内での御法(突進された)について戒告。
ただ、JRAがこの辺をちゃんと説明していないから、事情を知らないと色々と言ってしまうよな。
「なんで出遅れたんだよ、ちゃんと出せよ岩田望!」って思う人も居ただろうし、逆に『カンパイだろ!やり直せよ!』と主催者側へ文句を言いたくなった人も居ただろう。
けれども、今回に関しては不可抗力に近いものだと思うんだよな。個人的にはこの件がキッカケで降板なんて展開は勘弁してほしいが、関係者がどう判断するか。そこには流石に関与できないので、引き続き陣営の動向を見守りたいが、恐らく乗り替わりだろうな。春競馬では外国人騎手も色々来るだろうからねえ。
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これ、恐らく競馬ファンの皆さんが気づいていないだけで、実はそれなりの頻度で起きているんだよな。
例えばキタサンブラックが不良馬場の中で勝った天皇賞(秋)。この時はマスクトディーヴァほどではないが、同様の事象でキタサンだけ前扉が遅く開いている。馬場やら鞍上のリカバーやら、何より馬の能力もあってそこから勝ったけどな。
山川レオ
重賞・GIはオレに任せろ
情報も分析もイケる二刀流
1週間で72(48)レースある中でも、特に重賞・GIレースに特化した情報収集・精査を得意とする情報網。常々「勝てるレースしか勝負しない」と公言しており、独自の情報ネットワークに加え、ラップ解析を中心とした徹底的なレース分析から的中馬券を量産している。
なお、「勝てるレースしか勝負しない」という姿勢は、競馬に加え他の公営ギャンブル、株、FXなどの投資から身に着けたという。