
関西情報社CHECKMATEの山川だ。先週に引き続き『ラップタイム論』の後編を公開するぞ!
前編では「なんで前半1000mの通過タイムが注目される?」という会員様からのご質問にお答えさせていただいた。で、それに対する俺の個人的な答えは「キリがいいからだろ」だったんだよな。
というのも、注目しなければならないラップタイムの種類ってのは、もっともっと多くの種類があるんだよ。前にア●ミカが「白って200色あんねん」って言ってたけど、ラップタイムだって一緒だ。同じただの数字に見えるかもしれないが、詳しく見ていけば色んな種類がある。
今回はあくまで3つだけにはなるものの(あんまり色々紹介しているととんでもない長さになっちまう)、
実例を踏まえながら『ラップタイムの注目点』をご紹介する。ぜひこれを読んで、あなたもラップタイムが“読める”ようになろう!
【1】上がり3ハロン(=後半600m)
日本の競馬では中央・地方問わずに各馬の上がり3ハロンのラップタイムが公式に発表されている。なので、レース全体のラップタイムだけではなく、その馬が最後の600mを何秒で走ったかがすぐにわかるようになっているんだよ。
上がり3ハロンでの突出した数字と言えば、やはり代表例はリバティアイランドだろう。

22年7/30新潟5Rでマークした自身の上がり3ハロンは31秒4。これは中央競馬における史上最速タイの記録。ちなみにもう1頭の1位タイがルッジェーロという馬なのだが、これは新潟千直でマークしたタイムなんだよな。
いくらスローペースとはいえ、芝1600mの新馬戦で31秒台の上がりを記録して上がってくるってのは、まあありえない話。そりゃ三冠馬になるってもんだよ。
さて、上がり3ハロンに関してはもう一つ注目したいポイントがある。中央競馬では『レースの上がり3ハロン』もタイムが公式に発表されている。馬の上がりタイムと、レース自体の上がりタイムを簡単に見比べられるんだよ。この比較はしっかりやっておきたい。
例えば、昨年5/20東京9R・カーネーションC(3歳1勝クラス)で7万3060円的中に貢献した◎アンリーロードって馬が居る。

この馬の新馬戦は着順こそ2着だったんだが、レース上がり3ハロン34秒0というスローからの決め手勝負を、7番手から自身上がり33秒7で追い上げているんだよな。
要するに『前が楽だった分だけ位置取りの差で負けたけど、直線では勝ち馬以上の末脚を見せた』というレース。そして何よりその勝ち馬ってのが、後に重賞を勝つライトクオンタムって馬だったんだ。
重賞ウィナーと比べても見劣らない末脚性能を持っているんだから、3歳同士の1勝クラスなら脚力は上位だろう。分析面が高配当に貢献した好例だ。
【2】前半600m
後半600mは各馬のタイムも発表されるが、前半600mに関しては主催者が各馬個別のタイムを発表していない。
しかしながらレース全体のラップタイムは発表されるので、逃げ馬がどれぐらいのタイムで先行したかは確認できる。そして、それさえあればこの『前半600m』というタイムも馬券的に役立つ材料になるぞ。
ここで採り上げたいのはピューロマジックだな。先日の葵Sで36万馬券的中という超高配当に貢献した情報馬だ。

この馬、とにかく天才的に脚が速いんだよ。「馬なんてみんな脚速いでしょ……」と思うかもしれないが、このピューロマジックの速さはちょっと特殊で『ゼロからの発進』がとんでもなく速い。
ちょっとイメージしてほしいんだが、自転車を漕いでるときって、同じようなママチャリだったらそこまでスピードの差って大きくないと思うんだよ。
ただ、電動ママチャリと普通のママチャリだと、信号が青になった瞬間のスタートダッシュが全然違うだろ。ピューロマジックって電動チャリみたいな異常に速いスタートダッシュを決められるんだよな。

電動チャリなら坂もスイスイだ
で、ダッシュの速いピューロマジックはスピードの乗りもメチャクチャ良い。昨年12/2阪神9R・さざんか賞では、先頭で通過した前半600mの通過タイムが32秒6。これは阪神芝1200m戦における史上最速タイムだった。
加速が速いだけではなくて、その発進時に到達した最高速度をしっかりと維持できる。これがピューロマジックの強みであり、芝1400m以下のレースで100%ハナを切っているという圧倒的な先行力に繋がっているんだ。
コース史上最速タイムを記録できるぐらい速い馬なら、3歳同士のレースでスピード負けする可能性はほとんどないだろう?それもあって、、俺たちは葵Sで単勝8番人気のピューロマジックを文句なしの本命馬に指名できたってわけさ。
【3】残り200m(400m)地点までの
通過ラップ
最後はちょっと変化球。ゴールに到達する前、残り200mや400mのハロン棒を通過した時点でのラップタイムも大事な要素だ。
ここでは先週の函館スプリントSで◎指名し馬連3470円&3連複7080円的中に貢献したウイングレイテストが好例になりそうだな。
(シルバーランク以上の会員様限定)
[6月9日(日)函館11R]
函館スプリントS(GⅢ)
◎ウイングレイテスト(5番人気)
△サトノレーヴ
○ビッグシーザー
馬連:3470円的中
3連複:7080円的中
ウイングレイテストって函館スプリントSが初めての1200m戦出走だったんだが、我々からすると情報&分析の両面において、今回の距離短縮がプラスに働く可能性大と見ていてね。
ここでは分析=ラップタイムの話。注目したいのが昨年12/23阪神11R・阪神カップ(芝1400m)の内容。
当時はハナに立って積極的な競馬をして、残り200m=1200m通過地点では後続を突き放し先頭の座を守っていたんだよな。
そしてその1200m通過地点のラップタイムが1分7秒3なんだ。
昨年の阪神では25鞍の芝1200m戦が行われているんだが、その最速決着タイムがセントウルS(G2)での1分7秒2。1200mの重賞とほぼ同じだけのラップタイムで先行しているんだよな。
しかもセントウルSって、秋競馬の開幕週。最高の馬場コンディションで行われたレースなんだ。一方で阪神カップは年末のレースなんだから、馬場的には阪神カップの方が激流だったはず。
そこでハナを切り、1200m地点で先頭を守っていたウイングレイテストの速力の高さって、いかにも距離短縮で活きてくる要素だよな。

ただ、一つ大事な注意点がある。これは【2】前半600mのタイムにも言えるポイントなんだけどさ。
例えば、中山芝1600m戦でハイペースを刻んだ馬が、残り200m=1400m通過地点で素晴らしいタイムをマークしたとしよう。
その馬が次走で東京芝1400m戦へ出走。当然のように馬券を買ったら「アレ?」というパフォーマンスで敗戦……なんてことがあるかもしれない。
というのも、中山芝1600m戦では残り200m地点まで平坦&下り坂しかない。高低差にして4mほど下っていて、ラストの200mで心臓破りの急坂を上るっつーレイアウトなんだよね。
平坦と下りしかないレイアウトなら、そりゃ1400m地点のラップタイムは速くなりがちでしょ?直線の長いタフな東京コースで耐え切れませんでした、というオチは十分にあり得る。コース形態の違いってのをちゃんと理解しないと、ラップタイムを正確に把握するには至らないんだ。
中山ってのは個性的なコースで、ダート1200m戦もスタートしてから残り200mまでずーっと下り坂。だから前半のラップタイムがかなり速くなる。
だから、中山ダート1200m戦で前半3ハロンの通過ラップがとんでもなく速い馬が、他場に行ったらハナに行き切れませんでした、なんてパターンもあるんだぜ。
実際に昨年の中央主場における、ダート1200m戦の平均ラップを見てみると……
※2023年の全レース平均
中山:34.04秒
阪神:35.20秒
京都:35.23秒
こんな感じで、1秒ぐらい違うんだよ。
阪神や京都に遠征してきた関東馬は、数字だけを見たら中山でのスタートダッシュが速いように見えるかもしれない。しかし実際はコース形態による差を考慮して計算しなければならない、ということを忘れないように。
3つの項目だけでもこんな長くなってしまったので、今日はここまで。もしも反響が大きかったらもっと多くの要素をお伝えしていってもいいが、とにかくラップタイムは奥が深いということをおわかりいただければ何より。
こんな感じで「競馬のことをもっと勉強したい」「使っている理論などを教えてほしい」というお問い合わせも我々は大歓迎である!
もちろん関係者情報とか、秘匿性の高い部分に関してはどうしても伏せないといけないものもあるが、分析面であれば平日情報でこうして伝えられるものも少なくないからな。
実際、赤崎さんは毎週更新しているので、是非見ていってほしい。

それ以外にも、率直な疑問などなんでも待ってるぞ!今年の夏競馬も一緒に競馬を楽しんでいこう!

山川レオ
重賞・GIはオレに任せろ
情報も分析もイケる二刀流
1週間で72(48)レースある中でも、特に重賞・GIレースに特化した情報収集・精査を得意とする情報網。常々「勝てるレースしか勝負しない」と公言しており、独自の情報ネットワークに加え、ラップ解析を中心とした徹底的なレース分析から的中馬券を量産している。
なお、「勝てるレースしか勝負しない」という姿勢は、競馬に加え他の公営ギャンブル、株、FXなどの投資から身に着けたという。