個性派記者の本音トーク 山川

【特別コラム】天皇賞・秋を現地で観戦した記者の偽らざる本音と、リバティアイランドの未来予想図

個性派記者の本音トーク 山川
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重賞担当の山川です。今、府中のとあるホテルで執筆させてもらっている。

天皇賞・秋当日(10月27日)。俺は珍しく(?)、東京競馬場に臨場してした。

普段は栗東を拠点に活動していて、どちらかというと現場取材は他の記者に任せてレース映像の解析やラップ分析に時間を費やすことが多いんだが(決して現場に出ないワケではない)、この日ばかりは事情が違う。

府中で会いたい関係者も居たし、ここでしか知ることができない材料も多い。さすがは天皇賞・秋当日ということで、栗東の有力どころの調教師はズラリ揃っていたし、大物馬主やその側近といった関係者たちでごった返していた。

その中で、調教師と馬主がコッソリとやりとりを交わすシーンや、先々の馬券に繋がり得る極秘話なども色々とあったが、それはまた別のタイミングでご紹介するとして……。


何よりも、メインディッシュは天皇賞・秋だ。

3強対決、いや実質的は関西のスターホース2騎による豪華競演となるはずだった今年の秋盾は、勝者と敗者で明暗がクッキリと分かれた。残酷なまでに。

以下、あくまで“レース直後の個人的な見解”であり、これからレース後取材や分析を重ねた上で違う知見が出てくる可能性は十分あることをご了承いただいた上でお付き合い願いたい。

ドウデュース、あまりにも完璧。
引退までの残り2戦を噛み締めるべし

まずは、勝者を讃えるべきだろう。

我々としても勝手知ったる存在の一頭であるドウデュース×武豊の走りは、一言で“あっぱれ”だ。ホント、見た目通りに素晴らしい競馬だった。

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※当記事の写真はすべて
山川自ら撮影しました

何せ今年の天皇賞(秋)はレースの上がり3ハロンが33秒7。これって2000年以降の天皇賞(秋)において4位タイとなる高速上がりになる。この速い流れを後方から大外一気で他馬を撫で切りにしてしまったんだ。その脚力の高さたるや、過去の名馬たちと比べても相当なモノだと思うよ。

それは数字面からもハッキリと証明されていて、ドウデュース自身の上がり3ハロンは32秒5。この数字、歴代のGI勝ち馬の中でも史上最速だ。

これまでの最速記録は2021年のヴィクトリアマイルで、勝ち馬グランアレグリアがマークした32秒6だった。マイルで記録された数字を、2000mで上回ったというのもトンデモナイ話よ。

今のところ、あと2戦(ジャパンC→有馬記念)での引退が決まっているが、これからも一体どんな走りを見せてくれるのか、楽しみでしかない。


そうそう、武豊はこの馬の走りを調教でも絶賛していて、時には「馬ってこんなに速く走れるんだ」とまで言っていたぐらい。今日のとんでもない差し切りを見たら、レジェンドがそんな風に言うのも納得だよな……。

そして、それだけの信頼を寄せているからこそ、後方のあの位置で“待てる”んだよな。

後述するけど、今日の天皇賞・秋は明確に前が残りやすい流れだった。武豊ほどの人間が、それを察知していないはずがない。それでも動かないという選択を取れるんだから恐ろしいよ。

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勝者だけが許される
ウイニングラン

そして、この馬について『まだ伸びしろがあった』という点と、それを引っ張り上げた友道康夫厩舎の技量にも触れておきたい。

普段から間近で現場を見させてもらい、勝負馬券にも何度も貢献してくれている厩舎ではあるものの、それでもなお「この厩舎/この馬の凄さには、まだ上があったのか!」と思わされるくらい、パドック~返し馬でのドウデュースの姿には、単に“凄い”という表現では済ませてはならないような雰囲気があった。

彫刻か、あるいは美術品か……。思わず息を呑むくらいだったよ。

レースの全体像を振り返る
岩田望来が刻んだ絶妙なペース配分

改めてになるが、今年の天皇賞・秋はかなり上がりが速い展開になった。言い換えると『各馬が余力を持って直線を迎えるような流れ』だったということ。

実際に逃げたホウオウビスケッツが3着に残っているし、2着に食い込んだタスティエーラも内枠から先行していた馬である。レースのラップタイムは下記の通り。

天皇賞・秋のタイムデータ

ハロンタイム
12.8-11.5-11.6-12.0-12.0-11.9-11.8-11.1-11.1-11.5

上がり
4F:45.5秒
3F:33.7秒

前後半1000mずつ
59.9秒-57.4秒

もちろんホウオウビスケッツは鞍上・岩田望来が思い切ってハナを取り切ったこと。タスティエーラは名門・堀宣行厩舎がシッカリ立て直したことなんかが一つの好走要因であることは間違いない。ライバルたちもこのレースに向けて確かに準備を進めてきたということ。

その上で、初めての天皇賞・秋参戦、かつホウオウビスケッツにはテン乗りながら、自身に有利なラップを刻んだ岩田望は本当に上手く乗ったと思う。それは認めるべきだし、本人も大いに夢を見たんじゃないだろうか。先行争いが取りざたされたノースブリッジ(父・岩田康誠が騎乗)が出遅れたのは幸運だったかもしれないけどな。

タスティエーラは、今年関西へと遠征したレースではどうも体調が整わなかったものの、関東圏のレースであれば十分に上位争いが可能と改めて証明する走りだったからな。堀厩舎からしたら“してやったり”だろう。

もっとも、もう一頭の管理馬ダノンベルーガはスタート直後の2コーナーの入りでシルトホルンに前をカットされ(※この動きで過怠金の制裁あり)、大きく躓いてしまったのが痛かった。立て直して前目のポジションを取ろうとはしたものの、リズムが悪い走りになってしまったのは不運だったと言わざるを得ない。

あの川田からオーラが消えた
リバティアイランドは今後立て直せるのか?

先述した通り、先行有利の流れでホウオウビスケッツ・タスティエーラの2頭が好走しているからこそ……リバティアイランドの走りは不可解としか言いようがない。

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リバティアイランドの返し馬
この時は明るい未来を信じて疑わなかった


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山川レオ

重賞・GIはオレに任せろ
情報も分析もイケる二刀流

1週間で72(48)レースある中でも、特に重賞・GIレースに特化した情報収集・精査を得意とする情報網。常々「勝てるレースしか勝負しない」と公言しており、独自の情報ネットワークに加え、ラップ解析を中心とした徹底的なレース分析から的中馬券を量産している。

なお、「勝てるレースしか勝負しない」という姿勢は、競馬に加え他の公営ギャンブル、株、FXなどの投資から身に着けたという。

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