先週のスマッシュヒット!

【会員様のご質問に回答あり】人気馬の明暗分けた”ヨコの位置取り”とは?そして中京コースに山川が物申す!

先週のスマッシュヒット!
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重賞・G1情報を担当している山川だ。

12月最初のG1・チャンピオンズCレモンポップの逃げ切りだった。フェブラリーSの頃と比べても明らかに馬体が良くなっていたので、あとはこの大外枠をどう攻略するかだけだと見ていたが……果敢にハナを取り切った強気の競馬はお見事の一言だ。

このレースが『チャンピオンズC』と改称されて以降、8枠の馬が馬券に絡んだのは今回が初めてである。7枠の馬も0勝と明らかに外枠不利のレースになっているんだが、ではなぜ外枠が不利か、ちゃんと考えたことがあるだろうか?

そのメカニズムを解明すれば、なぜ今年のチャンピオンズCで1番人気レモンポップ2番人気セラフィックコールの明暗が分かれたか、よく理解していただけるだろう。

競馬は1レースで終わりではない。中京開催は来週以降も続くし、ひとまずは来年も12月のダート王決定戦は中京でチャンピオンズCとして行われる。先に向けて復習兼予習を行っていこう。

レモン&セラフィック
明暗を分けたポイントは“ヨコ”の進路

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まずは簡単に2頭のレース内容を比べる。

1番人気1着レモンポップ

・8枠15番からのスタート
・道中1番手=逃げ
・1コーナーで内ラチ沿いまで移動
⇒最後の直線まで内ラチ沿いのまま

2番人気10着セラフィックコール

・7枠12番からのスタート
・道中15番手=最後方
・向正面で馬群の大外に移動
⇒最後の直線まで大外のまま

見事なまでに真逆な競馬をしているな。まあこれは仕方がない。レモンポップはマイル戦や1400m戦でも走れる馬だから楽に先行できるスピードがあるが、セラフィックコールは出脚がないので後方になってしまう。

ただな、この“タテ”の位置取りって俺はそんなに大問題ではないと思うんだよ。この2頭の明暗を分けたのは“ヨコ”の位置取り

レモンポップは大外枠なのに終始ラチ沿いを立ち回っていた。対して、セラフィックコールは後方から進めた分だけ、道中から大外を回り続けなければ前を追えないポジションになった。これでは厳しい。

JRA公式・セラフィックコールのジョッキーカメラ
どれだけ外を回されたかわかりやすい

実際、今回のチャンピオンズCで外を回らされた馬はみんなパフォーマンスを落としている。

着順 馬名 ヨコの位置取り
1着 レモンポップ ラチ沿い
2着 ウィルソンテソーロ ラチ沿い→直線だけ中
3着 ドゥラエレーデ 内から2頭目
4着 テーオーケインズ ラチ沿い
5着 メイショウハリオ ラチ沿い
6着 ハギノアレグリアス 内から3頭目→4角大外
7着 メイクアリープ ラチ沿い
8着 ノットゥルノ 内から2頭目→直線だけ外
9着 アーテルアストレア 3角以降大外(4角内から7頭目)
10着 セラフィックコール 3角以降大外(4角内から9頭目)
11着 クラウンプライド 内から4頭目
12着 ケイアイシェルビー 内から3頭目
13着 グロリアムンディ 内から3頭目
14着 アイコンテーラー 1角内から4頭目→4角内から8頭目
15着 ジオグリフ 内から2頭目

色がついているのが内ラチから2頭目以内を通ってきた馬。それ以上外を回した馬ってのはみんな6着以下に負けているんだよ。

1角で上手かったのはドゥラエレーデに乗っていたムルザバエフ。彼は中央競馬のダート戦に対する適応力が相当に高くて、今回のレースでも無駄に外を回してロスを生むことがないようにと、強く意識して乗っていたんだよな。

そのためにも、スタート直後の直線部分では少し外に出しながら位置を主張していった。こうすることで、自らよりも外枠に入っている馬は簡単に内に入れなくなる。コーナーに入る部分ではドゥラエレーデをすっと内ラチ沿い2頭目に誘導していったが、ここまでに内に入り込めなかった各馬は大きな不利を被ることになった。

この影響で特に厳しい競馬になったのがクラウンプライド、ケイアイシェルビー、グロリアムンディ。見ての通りこの3頭は内に入れることができずに揃って2ケタ着順に敗戦。これはムルザバエフの策にハメられたんだよ。

内有利の理由は?

じゃあなんでこんな内ラチ沿いの方を通った馬が有利なのかってところ。

最大の原因はコーナーの角度だろう。中京競馬場は改修工事を行ったことで広いコースに変わったのだが、1~2コーナーに関しては旧コースと比べて見違えるほど広くなったというわけではないんだ。

実際にジョッキー目線でコースを見たことがある情報班からも「スタート地点から1コーナーの方を見ると、急にカーブが来て行き先が見えなくなるような感じがあるんですよ。他のコースならコーナーの先の方まである程度は見えるんだけど、中京は本当ギュンと曲がる感じ」という報告が入っていた。


更にもう一つ、多大な影響を与えているのは3、4コーナーのスパイラルカーブである。

そもそもスパイラルカーブとはなんぞや。これは『入口から出口にかけて半径が小さくなる(=出口の方が角度がキツくなる)コーナー』なんだよな。徐々にコーナーがキツくなるので、遠心力で馬群がバラけやすくなる。その分、差し馬の進路が確保しやすくなるという構造。

中央競馬では基本的にローカルの競馬場で導入されている。ローカルの競馬場ってのは直線が短いから、スパイラルカーブでも設置しないと差し馬がドン詰まりになりまくってしまう、ってことだな。


このスパイラルカーブ、中京の3、4コーナーにも用いられているんだ。




なんで?


中京のダートって直線が410.7mあって、これは中央では東京競馬場に次ぐ長さ。直線の短いコースならまだしも、これだけ直線が長かったらある程度は直線で馬群がバラけると思うんだが。

更に、この中京の3、4コーナーは下り坂になっている。つまり、外々を回す差し馬はそもそも下り坂で加速がつく状況となっており、なおかつスパイラルカーブで遠心力のキツいカーブを回らされて外に吹っ飛んでいく。そこの距離ロスが致命的になる。そんな理屈だよな。恐らくこのコースにスパイラルカーブは必要なかったんじゃないかね。

特殊コースの攻防は面白いが…

こういった特殊コースでの各騎手の攻防ってのはスッゲー面白い。今日のムルザバエフの乗り方なんてのがいい例だし、1コーナーで内ラチ沿いを取り切るために逃げの手に出た坂井瑠星も、明確に好騎乗だった。

他にも普段の中京では各騎手が工夫を凝らした乗り方をしているのを見る。松山とかはこういう人の工夫が必要なコースの乗り方はメチャクチャ上手いんだよな。今日だってラチ沿いを通ってロスなく運んでいた。


ただなあ……ここから先は俺の独り言だけど、そんなコースでG1をやるべきか?

G1ってのは最高峰の舞台であって、やっぱり各馬が持つ力を存分に発揮できる舞台であるべきだと思う。まあ、有馬記念の中山2500とか、天皇賞秋の東京2000とか、冷静に見るとメチャクチャなコースもあるにはあるんだけど、ダービーとかジャパンカップとかは王道コースの東京2400でしょ。

中京ダート1800はこうした内外の差が本当に大きく出てしまう舞台だ。将来の血統的価値に直接関わってくるG1レースを行うには、ちょっと偏りがありすぎると思う。


繰り返しだが、こういったクセのあるコースでの競馬は見どころもあって面白いのは間違いない。

実際にCHECKMATEでは『レモンポップはフェブラリーを勝った時とは馬体が変わっており、厩舎スタッフも距離不安はなし。機動力もあって対応可能!』と見て、関東馬ながら勝利の可能性十分とジャッジ。

対してセラフィックコールは『大味な脚質に中京ダートは合わない。もしここをマクリで勝ち切ったらしばらく敵なしと言わざるを得ない。それぐらい、今回のハードルは高い』と見て、押さえとして扱っていた。ちゃんと特殊コースを考慮したジャッジを与えていたんだ。

会員様から「レモンポップの最終ジャッジがかなり高い評価で驚いた」という質問があったので追記しておくと、データ面では確かにレモンポップは相当不利だったんだよな。自分も最初はレモンポップに懐疑的だったからね。

ただ、現場取材を進めていくと陣営のトーンがメチャクチャ良くなっていて驚いた。1週間もあれば当初のジャッジがガラリ一変することもあるのでそこはご了承いただきたい。

あと、この馬に関しては1400m以下で好走していた頃は別のジョッキーが乗っていて、今年のフェブラリーSから坂井瑠星に乗り替わるという珍しい経緯を踏んでいる。

瑠星からすると『短距離時代に乗っていないからこそ、先入観なく乗れている』部分が大きいんだろうな。そうじゃないとチャンピオンズCで攻めた騎乗はできないよ。

ただセラフィックコールのように、本当は勝つ実力があるのに、コースのせいで力を出せなかった馬なんかが居たら、それって色々ともったいないと思うんだよなあ……。


ま、とやかく言ったものの、この舞台でG1があるならば、この舞台の特徴をしっかり把握してどういったレースになるかを見抜くのみであるとは思う。中京開催は今年まだ2週間残っているし、一般条件戦の傾向なんかも見極めて糧にしていかないとな。


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今日はちょっと“お堅い”内容の振り返りになったんだが、毎週競馬をやっていると『特殊なレース』ってのが時折存在する。それこそ、人知を超えるようなレースがな。

例えば、阪神芝1800m外回りで行われた日曜阪神10Rは、前半1000mの通過タイムが57.1秒だった。

これ、数字だけでも“速い”というのは分かると思うが、実際にどれくらい珍しい数字だったかというと【阪神芝1800mで行われたレースで歴代3位の速さ】というトンデモ記録だ。

阪神に外回りコースができたのが2006年の12月。そこから17年間でだいたい750レースくらいある中で、歴代3位。こんなレアケースに出くわすことがあるのも競馬だ。そんなレースで先行した馬は、騎手がペース判断を大きく間違えたということは分かるだろう。


そういう場面に出くわした時は、とにかくもう次に繋げるしか無いってことよ。


師走競馬は始まったばかり。良い場面も悪い場面もしっかり振り返って来週以降に備えていく。引き続き叱咤激励のほどよろしくお願い申し上げます。